ピンチを乗り切るライティング講座 「完全アウェーな取材でもそれなりの記事を書く方法」-カリスマ腐女子の誕生会編-

ついに開幕した腐の宴

 

会場は大盛況。なぜ扉に「献血の旗」が貼り付けられているのかはわからない。

 

いよいよ開場。みきぽ氏の古くからの友人や、SNSでのファンなど、会場には計27人の腐女子・腐男子が集まった。

最初は、顔合わせも兼ねた歓談コーナーから始まる。知人がいる人、初対面の人とが入り混じっているわけだが、皆さん秒で打ち解けて、会場はすぐ和気あいあいとした空気に包まれた

 

「戦隊のファンですか!?」

「脚本家はどなたがお好きなんですか?」

「まだ間に合うよ!ライダーは見てたら知ってる俳優どんどんでてくるし!」

「大丈夫!!!彼は国民の彼氏になれるから!!!」

 

少し聞き耳を立てただけで、すでに知らない単語のオンパレード。外国に来たようだ。

自身の“推し”の関連商品を持ってきて、好きな作品について布教する人がいたり、同じジャンルが好きな人同士が出会ってヒートアップしたり、とにかく皆さん楽しそう。

 

各々、趣味全開のオタクトークを楽しむ

 

てっきり公共電波に乗せることができないハレンチなトークの応酬や、自身のこだわりを刃のようにぶつけ合う戦のような光景が展開されるのだろうと身構えていたが、全然違った。皆さん、お互いの好きなものを共有・共感・尊重し、ジャンルの垣根を越えて心の底から交流を楽しんでいる。

 

主催のみきぽ氏も、各テーブルを回ってぶいぶい交流している。その姿は凛としていながら温かく、カリスマオーラがにじんでいた。これまで私が見てきた彼女は「人の皮を被った仮の姿」であり、初めて真の威光を見たような気がした。

 

 

ファンとの歓談を楽しむ、シン・ミキポ氏

 

カメラ小僧をやりつつ、私も恐る恐る席に交じって、参加者の話を聞いてみた。皆さん部外者の私を快く受け入れてくれ、

 

・何がきっかけで腐ったのか

・好きな作品はずっと同じなのか、時とともに変わるのか

・原作が好きで腐るのか、腐った作品から原作に行くパターンもあるのか

 

などなど、各人の“腐のルーツ”に迫る質問にとても丁寧に答えてくれた。

 

例えば、「オタクの活動の中で一番お金をかける部分」は、グッズだったり、イベントの遠征だったり、二次創作の本だったりと、好きなジャンルや個人の好みによって情熱を注ぐポイントが異なることを知った

 

腐の世界への入り口も、人によって原作からだったり、二次創作からだったりとそれぞれだが、推しの作品やジャンルが違えど、好きになり方や、語り方の切り口に共通している部分が多々見受けられた。だからこそ、お互いの「好き」を受け入れ、共感する空気が生まれやすいのだろう

 

推しの関節に乳首っぽいトーンを貼ったことがある」のは誰だ

 

当たり前のようにサイリウムを持参する参加者の姿

 

歓談タイムが終わり、メインの企画コーナーが始まる。目玉のシャンパンタワーは、みきぽ氏がグラスもシャンパンも自前で揃えるという気合の入りよう。

 

計5本のシャンパンを次々開けてはタワーに注ぐみきぽ氏を前に、参加者はサイリウム片手に息ぴったりのコールを飛ばしまくる。

皆さんけっこうパリピ(パーリーピーポーの略)じゃないか!と思ったが、あとから聞けば、この時のコールもとあるホストキャラのキャラソング※だったそうだ。うーん、ファビュラス。

※元ネタは「ヒプシノスマイク」の伊弉冉一二三(読めない)氏のキャラソン「シャンパーンゴールド」

 

 

続いて、「腐の椅子取りゲーム」が開幕。これがまたチョー面白い。

 

 

参加者の数-1の椅子をサークル状に並べて座り、中央に立った人が「○○な人!」とお題を言う。お題に心当たりがある参加者が席を立ち、ほかの席に移動しながら椅子を奪い合い、余ってしまった1人がまた次のお題を決める。

ルールは一般的な椅子取りゲームに殉じているが、飛び出すお題が

 

・テ〇スの王子様に人生狂わされた人

・男の友達をカップルにしたことがある人

・歴史ジャンルにハマった結果、資料を読み漁ったことがある人

・推しの関節に乳首っぽいトーンを貼ったことがある人

・推しを爆弾魔にしたことがある人

・推しが死んだ後天国で切腹したことがある人

 

 

等々、腐の世界ならではのカオスなもの(特に、後半3つは一体何なんだ)ばかりなのだ。

 

お題が出るたびに、各方面から「あぁ~!」、「わかる!」、「ピンポイントすぎるだろ!」と様々な反応が飛び交う。

そして、真ん中に残ってしまった人は、心当たりのあるお題について「誰をカップルにしたんだ!」、「誰に乳首トーン貼ったんだい?」などとヤジを投げられ、個人の性癖を強制的に暴露させられる

 

もちろん私は、ほとんどのお題の意味や背景が分からなかった。それでも、異常な盛り上がりを見せる皆さんを見て、こちらまで楽しい気持ちになってくるから不思議だ。

(追記)このゲームは、後にみきぽ氏が「腐ルーツバスケット」という名で解説ツイートを投稿。”フルーツ”と”腐のルーツ”という掛詞が入った雅(みやび)なネーミング。さくっとバズらせているあたり、さすがカリスマ腐女子である。

 

 

続いて行われた「ビンゴ大会」では、参加者の皆さんがこれまで「通過してきた」作品やジャンルをビンゴの枠に書き入れ、みきぽ氏が独断と偏見で集めた腐のキーワード軍をもとにビンゴをやっていく。

それぞれの歩んできた歴史が滲むビンゴカード

参加者が「4×4の計16マス」を当たり前のようにさらさらと埋めていく様を見て、改めて腐女子・腐男子の皆さんのアンテナの広さを感じた。

 

最後はみきぽ氏が参加者からもらったバースデープレゼントを開封するコーナーが催され、パーティは大盛況まま幕を閉じた。

 

ちなみに鈴木からは、銅版画などで使う「腐食液」をプレゼントした。以前、みきぽ氏が「世界の全てを腐らせたい」と言っていたからだ。

 

 

楽しいひと時と、一つの誤算

 

会場にはメッセージコーナーが。目を凝らすと不適切なワードが散見されるので、目を凝らさないことにする

 

以上が、私が「現場で見た」みきぽ生誕祭の全容である。

 

初めて飛び込んだ腐の世界は、想像をはるかに超えて濃く、明るく、温かく、ファンキーだった。

完全アウェーであることに変わりはなかったが、一つ大きな誤算があった。面白いこと・書きたいことがありすぎて、削るのが惜しいほど素材が集まってしまったのだ。

 

当初の想定とは逆のシチュエーションに置かれてしまった訳だが、実はイベント取材でこのパターンも意外とある。大量の情報の中から、大事なポイントを選んで簡潔にまとめるのも、編集者の腕の見せ所なのだ。

 

ということで、集めた情報を元に編集した「記事版・みきぽ生誕祭レポート」へGO。

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