カテゴリー: 企画

  • 紙粘土で「玉ねぎが抜けちゃったオニオンリング」を作る

    紙粘土で「玉ねぎが抜けちゃったオニオンリング」を作る

     

    今年もデイリーポータルZさん主催の「地味ハロウィン」に参加してきた。

    私は例年頭に何か「地味なモノ」を作っては頭に載せて参加しているのだが、2023年は「玉ねぎが抜けちゃったオニオンリング」になった。

    オニオンリングを食べたことがある人なら、誰もが一度は玉ねぎが先に抜けちゃって衣だけが残ってしまうという悲しい経験をしたことがあるだろう。

    玉ねぎというやつは繊維質なので、オニオンリングをかじる時は上下の歯をしっかりと噛み合わせて「えいや」と噛み切る必要がある。ここで思い切りが悪いと、玉ねぎが歯にひっかかってスルスルとキャストオフしてしまうわけだ。

    私はこの状態になってしまったオニオンリングのことを「オニオフリング」と呼んで親しんでいるのだが、本記事でも以下オニオフリングと表記する。

    今回オニオフリングを、紙粘土で作った。まずは完成した姿を見ていただきたい。

    いかかだろう。我ながら、かなりオニオフリングに近い再現度ではないか。しかし、ここに至るまでは試行錯誤の連続で、まぁ大変だった。

    制作記をここに記すので、紙粘土でオニオフリングを作ってみたいと考えている人は参考にしてほしい。

    ちゃんと「玉ねぎが抜ちゃった感」を再現したい

    オニオフリングを作るにあたって、必ず抑えたかったポイントは「玉ねぎが抜けちゃった感」をしっかり再現することだ。

    例えば、紙粘土を丸い輪っかの形に固めて、その一部を切り取り、切り口の入り口付近だけを粘土ナイフなんかを使って玉ねぎの断面の形にくり抜くだけでも、ビジュアル的にはそれらしいものを作ることができるだろう。しかし、衣の内部がぐるっと一周ちゃんと抜けていないオニオフリングなんて、見る者を欺くばかりのまやかしである。紙粘土で再現するにあたっては「逃げ」だと判断した。

    ということで、紙粘土で、ちゃんと中身が玉ねぎの形に抜けたオニオフリングを再現するためにはどうすれば良いかを考えていく。

    まずは実物の観察から。

    オニオンリングはお店によって衣の色や厚さ、パン粉のあるなしなど、変化に富んだビジュアルをしている。私は衣がカリッカリのやつが好きなので、今回は濃いきつね色のものを再現することにした。これを食べられる場所は吉祥寺の「ヴィレッジヴァンガードダイナー」である。

    中の玉ねぎは乳白色で、繊維の色は薄緑色

    そのまま美味しく食べてしまいたい気持ちを堪え、意図的にオニオフリングを作って観察する。

    少しかじって引っ張ると、しっかり火が通った甘い玉ねぎが出てきた。透き通った色を想像していたが、実物はかなり濃いめの乳白色だった。ふだん意識してオニオンリングの玉ねぎをじっくり観察する機会なんてないから、イメージと実物との間に乖離ポイントがあるのだ。

    空洞の様子もしっかり観察しておく

    今回の要となる、玉ねぎをオフしたあとの空洞もしっかり観察する。衣部分は思ったより薄く、玉ねぎが抜けた後はひし形に近い空洞になっている。「なるほど四角形になっているのかぁ!!!」とここでもまた気づきがあった。

    実物の確認が済んだところで、オニオンリングを全て美味しくいただいた。ヴィレヴァンダイナーはオニオンリングはもちろん、ハンバーガーもマジで美味しいので気になる人は行かれたし。

    さぁ、家に帰って制作開始だ!!!

    次ページ:空洞づくりは波乱の連続

  • 地味ハロウィン2022「冬虫夏草」はいかにして作られたか

    地味ハロウィン2022「冬虫夏草」はいかにして作られたか

    メリークリスマス!ふ凡社です。

    今年も、デイリーポータルZさん主催の「地味ハロウィン」に参加してきた。

    2017年の初参加から6回目を迎えた今回、私は一つのパラダイムシフトを起こすことに決めた。

    先に結論を申し上げると、今年の仮装は

    「冬虫夏草」

    である。

    なんだこれは

    ここに至るまでにけっこういろんなことがあったので、制作記をお伝えする。

    初の全身仮装

    冬虫夏草とは、簡単に言うと虫に寄生するキノコ※のこと。キノコは成長の過程で最終的に宿主を殺めて成熟する。ものによっては漢方薬としても珍重される。

    ※実際にはキノコだけでなくカビなども含めた「菌類」というカテゴリ。虫以外に寄生するものもある。

    私は地味ハロウィンに、毎年「地味なモノ」を作っては頭に乗せて参加している。

    左から「お客が一口も飲まなかった麦茶(2018)」、「キャッサバ(2019)」、「ピンを抜くゲームのピン(2020)」

    「頭の上に何かを乗せているだけでは仮装と言えないのではないか」

    「本体は飾り」

    等々つっこまれながらも、「これは仮装である」と言い張ってきた、が。

    実は、会場で他の参加者方々のステキな仮装を見るたび「あぁ、わたしも全身の仮装をやってみたい」と思ってはいたのだ。それでも「頭の上に何かを乗せる仮装以外をしたら死ぬ」という念を込めた鎖を心臓に巻いてしまったが故に、実現できずにいた。

    それがどうだろう、冬虫夏草であれば「頭の上に何かを乗せる」という縛りを踏襲しつつも、寄生された本体(私)も含めた全身の仮装ができるではないか。抜け穴、見つけたり!

    かくして、ウッキウキで準備を始めたわけだ。

    日本は冬虫夏草大国だった

    まずは例年通り資料集めから。『冬虫夏草ハンドブック』(文一総合出版)という図鑑を買い、どの冬虫夏草になるかを決める。

    図鑑によると、日本は数百種以上を産出する冬虫夏草大国らしい。

    冬虫夏草と言えば、漢方薬でよく見る「芋虫に細長いキノコがついているやつ」のイメージしか持ってなかった(イラスト参照)が、図鑑を見ればその姿はキノコっぽいものから、ほっそい糸みたいなもの、虫の全身から小さな棘のように発生するものなど実に多様だ。

    フリー素材サイトのイラストも、この形だった

    とりどりの冬虫夏草の中から、頭の上に乗せることを見据えて、ある程度強度が確保でき、かつわかりやすい見た目のものを探す。

    この基準で選んだのは「サナギタケ」。その名の通り、蝶や蛾の蛹(さなぎ)に寄生する冬虫夏草で、鮮やかなオレンジ色をしていてキレイ。冬虫夏草の中でも、日本中で見られるメジャーな存在のようだ。君に決めた。

    ハンドブックのセンターを飾るのがサナギタケ

    サナギタケを探しに秩父へ

    図鑑だけを参考に作ることもできそうだが、どうせならサナギタケの実物を見てみたい。

    『冬虫夏草ハンドブック』には「サナギタケは基本的に夏の時期に発生するが、埼玉では9月くらいにも見られる」との情報があった。また、埼玉県立自然の博物館のHPに発見報告の情報を見たので、同博物館に詳細を問い合わせてみたところ

    ブナ林以外でも発生するようですが、狙って観察するのであれば、6~7月頃にブナ林を歩くようにすると、いずれ出会えるのではないかと思います。

    埼玉県内で比較的アクセスしやすいブナ林は、三峰神社~霧藻ヶ峰あたり

    との回答をいただいた。やはり発生しやすい時期は夏のようだが、図鑑にあった「秋頃も見られる」という情報に望みをかけ、現地に行ってみることに。

    都内から電車とバスに揺られること約3時間、三峰神社の麓に到着。

    神社の周辺から霧藻ヶ峰にかけて登山道になっていて、目当てのブナ林が広がる。

    神社の参拝客たちによる賑わいに背を向け、さっそく入山。

    その日は小雨が降っていて、ブナ林は濃い霧に包まれていた。登山道からはみ出さないよう注意しつつ、周辺の地表にオレンジ色を探す。

    斜面を凝視しながら進む

    ところどころ謎のキノコが生えているのは確認できるものの、ゆけどもゆけどサナギタケらしき姿は見えない。

    謎キノコ1
    謎キノコ2

    たまにサナギタケではないものの、冬虫夏草っぽいやつも見つけたりする。

    冬虫夏草っぽいにょろにょろ
    あれ、なんかこんな冬虫夏草なかったっけ?とハンドブックを確認する。なかった。

    しかしまぁそれにしても…

    霧がスゲェや!!!!!

    あたりはしんと静まり返り、景色は完全に異界。

    たまに登山客とすれ違って挨拶を交わしたりしていなければ、あっという間に山に人間性を吸い取られてしまいそうで怖い。

    入山して1時間くらいでさらに霧が濃くなったので「あ、これ以上は無理だな」と判断。なんの成果も得られないまま、すごすごと退散する運びとなった。

    完全にホラーゲームの絵

    サナギタケ発見、ならず。

    それでも現物を見たい

    それでもサナギタケを諦めきれなかった私は、冬虫夏草を展示してる施設がないか探してみることにした。すると、群馬県立自然史博物館のホームページの収蔵資料情報にサナギタケを発見。

    念のため同博物館にも確認を取ったところ、サナギタケは常設展示されてるとのこと。ビンゴ!

    やってきたぜ群馬県立自然史博物館。

    しばらくティラノサウルスロボや巨大な古生物の骨格など、ド派手な展示が並ぶ館内を楽しみながら歩みを進めるが、冬虫夏草らしき展示物が見当たらない。

    展示順路も終盤に差し掛かり、「本当にあるのかいな」と不安になってきたところ…

    あった!ありました!!冬虫夏草コーナー!!!

    刮目せよ、これがサナギタケだ!!!

    図鑑で見たのとまったく同じビジュアルに感激すると同時に、思ったことがある。

    サナギタケ、ちっちゃ!!!!

    こりゃ見つからねぇわけだ

    サナギ部分を入れても、指の第二関節くらいの大きさしかない。図鑑では接写されていたこともあり、てっきりマイタケくらいの大きさかと思っていたが、全然違った。こんなに小さいんじゃ、仮に三峯神社のブナ林に生えていたとしても絶対見つけられなかったと思う。

    展示ケースにへばりつくようにじっくりと観察して、細部をインプットする。あんまり深刻な顔をしてじっと眺めていたものだから、はたからみたら「親族か誰か冬虫夏草に変えられたんか?」と思われたかもしれない。

    とにもかくにも無事実物を見ることができ、大満足。家に帰ってさっそく制作に入ろうではないか。

    次ページ:いきなり難所

  • TUBEの「夏歌」研究レポート

    TUBEの「夏歌」研究レポート

    イラスト:大田翔

    「夏のアーティストといえば、誰?」

    と日本人1億2550万2000人に尋ねると、

    約1億2550万1900人が「TUBE」と答える。

    私は夏が来るたび「あぁ今年もTUBEの季節だなぁ」と思うのだが、その実特に有名な『あー夏休み』と『シーズン・イン・ザ・サン』の2曲くらいしか聴いたことがない。

    彼らの夏歌をほとんど知らないのに、「TUBEは夏歌をたくさん歌っている」というイメージはしっかり持っているのだ。よく考えたら不思議な話だ。

    そんなことを考えていたら、ふと一つの疑問が浮かんだ。

    「長年夏歌を作り続けていれば、ネタやフレーズを使い尽くしてしまうのではないか」

    TUBEは今年で結成37年。30年以上もずっと夏を歌い続けているわけだから、途方もないことである。彼らはこんなにも長年にわたり「夏のなに」を訴えてきたのか。考え出すと、どうにも気になって眠れやしない。

    「よし、ここらでチョイとTUBEの夏歌にしっかり向き合ってみよう!」

    彼らの夏歌の分析し、レポートを作ることにした。大人の自由研究の始まりである。

    ーおことわりー

    こちらの記事、書いてみたら1万字を越える超大作になってしまった。読むにあたり「ウルトラ長い記事」であることをご了承いただきたい。

    また、今回の研究で作成したTUBE夏歌データをまとめたExcelは、Googleスプレッドシートに移管した。

    URLを共有するので、必要に応じてごらんいただきたい。(見なくとも記事の内容は分かるようになっているので、ご安心を!)

    https://docs.google.com/spreadsheets/d/1oEs3y-Ykxoq1AFkTKfXc1uodunIlwBw0/edit#gid=634868119

    研究の目的3本柱

    TUBEの夏歌を研究するにあたって、3つの目的を定めた。

    1、TUBEが手がけてきた曲の中で、夏歌がどれくらいあるかを調べる

    2、夏歌の中で頻出する言葉やフレーズを集計・分析し、その特徴や傾向を探る

    3、頻出する言葉やフレーズを組み合わせることで、TUBEの夏歌っぽい詩を作ってみる

    この3本を軸に研究を行うことにする。

    ちなみに今回は「原曲を一切聴かない」という縛りを設けた。

    進める中で猛烈に曲を聴きたくなることが予想されるが、今回はあくまで、彼らが紡ぎ出す”詩”にフォーカスした研究にする。元曲の拝聴は、研究が終わってからの楽しみに取っておこう。

    いざ、TUBEの夏へDIVE!

    夏歌の範囲を決めるのが難しいね

    まずは夏歌の割合調査から。

    Wikipediaなどの情報を参考に、これまでリリースされた曲のタイトルをエクセルにリストアップする。

    集計の結果、TUBEがデビューからこれまで手掛けてきた曲は444曲だった。同じ曲のアレンジ版や、他のアーティストに提供したものなどを含めると誤差があると思うが、いったんこれを母数とする。

    続いて、曲の歌詞を調べて内容を確認し「夏歌かそうでないか」で分類してゆく。

    単純明快な作業だと思って始めたが、進めるうちにかなり難しいことに気がついた。というのも、TUBEの夏歌は、ストレートに夏が舞台のものだけでは無いからだ。

    例えば過去の夏を振り返っていたり、別の季節に夏に恋焦がれていたりといった、多様なバリエーションがある。こうなると

    「どこまでを夏歌とするか」

    の線引きを、こちら側で決める必要がありそうだ。

    TUBE「夏歌」認定基準

    あまたの歌詞を見比べ、その傾向から定めたTUBEの「夏歌」認定基準は以下の通りである。

    例えば、『冬の海岸通り』という曲は、タイトル通り冬が舞台の歌である。しかし、この曲の歌い出しは

    君の唇がサヨナラと動くのがこわくてKISSした

    眩しいあの夏追いかけてここまできたけれど

    TUBE『冬の海岸通り』より

    となっており、冒頭から思いっきり夏に思いを馳せている。こんな具合で、夏以外の季節に夏を想ったり、過去の夏を思い出したりしてる曲は夏歌に含めようというわけだ。

    また『セイリング・ラヴ』という曲の中には明確に「夏」という言葉は出てこないが

    ”まぶしげなおまえの焼けた素肌に”

    ”走り出せ銀色の海へと”

    TUBE『セイリング・ラヴ』より

    といった、極めて夏っぽいフレーズが登場する。夏だと断定できる言葉が含まれていなくても「これはもう夏でしょ」と言えるシチュエーションの曲も夏歌としてカウントすることにした。

    常夏の地域が舞台の歌も、厳密にいえば、暦の上では夏以外の季節であることも考えられる(実際『ウルトラバイオレット』という、日本が冬の時期に常夏の国に飛ぶ歌がある)わけだが、これもまぁ夏歌として良いだろう。

    除外する夏歌

    割合としてはかなり少ないが、春夏秋冬、1年をテーマにした曲もいくつかあった。これらについては、夏というワードが登場していたとしても「夏にフォーカスした歌ではない」ことが分かるので、除外とする。

    そのほかの特殊な例としては、例えば『Remember me』という曲には日本語と Englishバージョンがある。こちら日本語版は夏が出てくるが、英語版には出てこない。『Can’t take my eyes off of you (NOB SUMMER)』は名曲『Can’t take my eyes off of you』のカバーで、TUBE版にはSUMMERと銘打ってあるものの、歌詞的には原曲アレンジと変わらないみたいなので、夏歌とはいいがたい。

    こんな具合で、夏判定が微妙な歌は「△」として除外する。

    また、2015年発売の結成30周年アルバム『Your TUBE+My TUBE』は、1枚目が他のアーティストがTUBEをイメージして作った曲、2枚目にTUBEによる楽曲が入っているという特殊な商品だ。こちらの1枚目の曲については、他のアーティストによるものとして今回は除外している。

    次ページ:TUBEの夏歌は何曲あるのか?

  • 地味ハロウィン2021「糖度の高い芋」はいかにして作られたか

    地味ハロウィン2021「糖度の高い芋」はいかにして作られたか

    こんばんは、ふ凡社 鈴木じゃよ。

    2021年もデイリーポータルZさんの名物イベント「地味ハロウィン」に参加してきた。

    私は2017年の初参加以来、毎年頭に地味なオブジェを乗せて参加するのを常としており、今年は「糖度の高い芋」の仮装をやった。

    元ネタは、サツマイモの通販サイトとかでよくある、芋に糖度計をぶっ刺して「バナナの2倍近くの甘さを記録!」といった文句と共に、その芋が「いかに甘いか」を訴えるPR画像である。

    引用元:https://store.ponparemall.com/oimoya/goods/5062301/

    今年、この手の広告をTwitterとかでやたら見ることが多く、妙に印象に残っていた。そのため、地味ハロウィンが近づく前から「今年は糖度の高い芋だな」と決めていたのだ。

    完成した仮装は以下の通りである。

    この糖度の高い芋、かなりの工夫を凝らして作ったのだが、詳細な工程を会場でご紹介することは難しい。

    そのこだわりを人に知られず墓場に持っていくのも忍びないので、この場を借りて糖度の高い芋の制作記を残すことにする。

    将来糖度の高い芋を作ろうと思う人が出てきたときのしるべとなれば幸いである。

    まず糖度の高い芋を食べてみる

    地味なオブジェ作り、最初は「実物の観察」から始まる。

    糖度の高い芋の代表格と言えば「安納芋」。毎年秋になると安納芋関連の商品が大量に出回るので、それらを食べたことはある。しかし、よく考えたら安納芋そのものをちゃんと食べたことが無い。

    それでは実物を食べてみようということで、東京は世田谷区にある「焼き芋専門店  ふじ」さんに行ってみた。

    焼き芋専門店ということだけあって、安納芋だけでなく、珍しい品種の焼き芋がたくさん売られている。さっそく、大本命の安納芋を買った。

    これが安納芋だ

    想像よりも小ぶりなサイズ感。また、サツマイモというとなんとなく紫色の皮のイメージがあるが、安納芋は明るい土色だ。

    皮から絵にかいたように蜜がしたたっていて、食べる前から「甘いでっせ!」オーラがにじんでいる。いざ実食。

    甘い!!!!!!!!!

    そりゃもう甘いんだこれが。これまで加工された安納芋系のスイーツをたくさん食べてきたので正直「いうて実物は控えめの甘さなんじゃないか」と心配していたのだが、疑った私が悪かった。中身くり抜いてスイートポテトにして詰めなおしてるんじゃないかと思うほどに甘い。

    「芋単体でこれだけ甘いんだから、もはやスイーツに加工する必要…ある?」という暴論が頭をもたげる。さぁ、実物の質感・甘さをインプットしたところで芋づくりに突入だ。

    芋の内側をいかに再現するか

    安納芋と糖度計は、主に紙粘土で作る。

    まずは芋から。広い会場で遠目に見ても芋と分かるように、実物の5倍くらいの大きさで作ることにする。

    まずは紙粘土4袋分を贅沢に使って、芋の大まかな形を作る。

    このデカさになるとこねるのも大変だ

    ベースは割とサクサク作ることができたが、頭を抱えたのは「芋の内側の質感をどう再現すりゃいい(B’z調)」という点だ。何がどう大変だったか、順を追って説明する。

    安納芋を観察すると、内側は繊維質であることが分かる。

    紙粘土も繊維質でできている。この共通点から、紙粘土をちぎれば、それがそのまま芋の断面に近い質感になるのではないかと予想した。これについては、おおかた正しかった。

    では、できあがった原型の表面をちぎりゃ解決じゃないか、と思ったが、そんなに単純ではなかった。

    少しずつちぎると指の圧力が原因で、繊維質だけでなく滑らかな面があちこちに出来てしまう。かといってもともとのサイズがでかいので、表面を一気にモシャッとちぎることもできない。

    原型を直にちぎる方法を断念し、ちぎって繊維質にしたパーツを別途作って、それらを原型の表面に貼り付ける手法に切り替えることにした。

    しかし、やはり普通に紙粘土をちぎるだけでは大きなサイズの繊維質パーツを作ることができない。さてどうしたもんか。あれこれ試行錯誤を重ねるうちに、偉大な発見をした。

    新品の紙粘土を、こねずにちぎれば良かったのだ。

    新品の紙粘土は、内部に空気を多く含んでいる。なので、一切こねずに2枚おろしにするイメージで裂くと、紙粘土の表面積分の巨大な繊維質パーツを作ることができるのだ。

    みてくれこのフワフワ繊維質

    「紙粘土はまずこねてから使うもの」という固定観念を捨てないとたどり着けない答えだった。

    こうして作った巨大な繊維質パーツを原型に貼り合わせると、素晴らしく芋に近い内側を再現できた。

    アルビノのイソギンチャクのようにも見える

    続いて、芋の皮がめくれている感じを再現するために薄い皮パーツを何枚か作り、芋の周りにペタペタと貼り付けいく。そして、接合部を指で馴染ませれば・・・

    皮のひらひらめくれた感じも再現

    芋の原型、完成。

    見た目は非常に安納芋

    つづいて今回の仮装の要となる糖度計。

    形がシンプルなので、芋に比べてサクサク原型作りが進んだ。巨大な芋に対応するサイズの大きな糖度計型紙を作り、型紙に合わせて粘土を成型→乾燥させればできあがりだ。

    芋に合うように型紙でしっかりサイズを調整した

    芋の色合いを追求する

    続いて、アクリル絵の具で芋に色をつけていく。まずは内側部分をシンプルな黄色、皮部分を薄めの茶色で塗る。これだけでも随分それらしい感じになり、テンションが上がる。

    「糖度の高い芋」の形が見えて参りました

    続いてデティールを詰める工程に入る。芋の内側は蜜の具合なんかによってところどころ色が濃いところがあるので、ベースの黄色よりも濃い、オレンジっぽい色を作ってぽつぽつと塗ってみる。

    うーん、これだと色分けがくっきりしすぎていて、今一つリアルさにかける。もう少し薄めの色にしてやり直したほうがよいだろうか。

    しかし。色の試行錯誤は、重ねるごとにどんどん迷路に入ってしまうことを、前回のキャッサバ作りで嫌というほど経験している。クオリティを追求するあまり、あんまりこねくり回しちゃうのも考え物だ。

    とりあえず、いったん色の濃いオレンジをリセットすべく、ふたたびベースの黄色を塗り重ねることにした。すると、意外なことが起きた。

    おや?

    あらヤダ、なんかすごくイイ感じじゃない!?

    上から重ね塗りをした結果、黄色とオレンジ色がいい感じに混ざって、適度に自然な濃淡を醸し出しているではないか。もういい、これでいい。ここで止めよう。

    あとは細かいポイント。焼き芋の内側の皮に近い部分は、皮の表面の色が映るのかこげ茶色になっている。こちらも再現するため、皮の境目あたりを茶色を混ぜた黄色で塗った。芋の内側はこれで完了だ。

    皮付近は焦げ目になってる

    皮部分も、地の色より少し薄い茶色を重ね塗りして色の濃淡を作り、質感をアップ。

    そして皮について忘れてはいけないのが、蜜である。

    「甘すぎて蜜が皮からしたたっている」ことについての言及もまた、糖度の高い芋のPRでよく見る訴求ポイントである。私が食べた安納芋も、御多分に漏れず蜜がにじみ出ていた。

    蜜って本当に滴るんだ、と感動した

    今回は巨大な芋ということで、景気よく蜜をダラダラとしたたらせていく。さらに、蜜の光沢を表現するため、蜜部分だけニスをひと塗り。

    蜜部分はとろりと光っているの

    これにて、芋部分の全工程が完了した。

    糖度計の仕上げは潔くテクノロジーを使う

    続いて、糖度計も仕上げていく。

    糖度計の数値などの細かい部分は絵の具で書くとうまく再現できないので、潔く印刷技術に頼ることにした。まずはパワーポイントで

    ・もっとも大事な「バナナの200倍近くの甘さを記録」というPOP風の吹き出し

    ・バナナの200倍の甘さにあたるデジタル数値

    を作成し、コンビニの光沢紙印刷で印刷する。

    DPZさんのロゴは、糖度計のメーカー表示のパロディとして入れる

    これらを切り抜き、厚紙で補強して原型にはりつければ糖度計のできあがり。

    バナナの200倍近くの甘さは現実にはあり得ない数値である。細かいことは気にしない。ハロウィンらしく、景気よく行こう。

    ちなみに、糖度計の先端は、ちゃんとプリズム部分を再現してあるぞ。

    プリズムは多分、糖度を測る物質との接地面にあたる部分の名前だと思う。多分。

    改めて完成品を見てみよう

    かくして出来上がった芋と糖度計を、例年通り頭に乗っける機構に取り付ける。

    頭に乗っける機構といっても、100均で買った園芸用の皿に穴を開けて、顎紐(靴ひも)を通しただけの簡素な作りである。

    ベースの準備が済んだら、糖度計と芋の位置を調整して固定する。今回は糖度計を斜めに刺す形を再現したかったので、木材にフックを取り付ける形で糖度計を支える仕組みも作ってみた。

    ちょうどいい大きさのフックがなかなか見つからなくて苦労した

    糖度の高い芋、ここに完成だ。

    冒頭で糖度の高い芋の写真を見た人の多くは「なんのこっちゃ」と思ったことだろう。しかしいかがだろう、実に手の込んだ工程を経て作られたことを知ってから見ると、この地味な仮装もなんとなく大層な作品に見えてこないだろうか。来ないか。

    引き続き、誰に求められるでもなくこだわりを詰め込んだ、地味な仮装を作っていく所存である。

     

    【関連記事】

    アルティメットキャッサバを作る

  • 口紅のメッセージを書きたい、消したい

    口紅のメッセージを書きたい、消したい

    ふ凡社鈴木です。

    今回は「鏡に口紅のメッセージを残される」というシチュエーションを再現し、自力で消すところまでを体験したお話である。

    鏡に口紅のメッセージを書かれたとき慌てふためくことがないよう、いかに対応すべきかを各種試してみた。誰かに口紅で何か書かれそうな予定のある人はぜひ参考にしていただきたい。

    きっかけは「ルージュの伝言」

    松任谷由実の「ルージュの伝言」という曲がある。映画『魔女の宅急便』の挿入歌として聴いたことがある人も多いことだろう。

    歌の内容は

    浮気性な恋人に愛想をつかしかけている人が、恋人の家のバスルームに口紅(ルージュ)で伝言を残してから彼のお母さんの元へ逃避行する

    というもの。

    歌の中では風呂場のどこに伝言を残したのかまでは触れられていないが、まぁ十中八九、鏡に書かれたものと考えてよいだろう。

    私は幼いころからこの歌が大好きでずっと聴いているが、口紅で鏡に字を書く感触ってどんなもんじゃろなと気になっていた。さらに、ある程度大人になってからは「実際口紅で鏡に書かれたら処理が大変だろうな」と思うようになった。

    これらの疑問を一挙に解消するタイミングが、今やってきたというわけだ。

    口紅を買いに行く

    まずはキーアイテムの口紅を買いに行く。

    口紅を買うのは人生初である。コスメコーナーで買い物するのも初めて。

    てっきり口紅は口紅だけでドーンとまとまって陳列されているもんだと思っていもんだから、ブランドごとにまとめられたさまざまな化粧品たちの中から「どれが口紅か」を認識するのがそもそも難しかった。

    続いてお財布との相談。あくまで実験用ということで、3000円以上するちゃんとした価格帯のものを買うのはちょっと気が引ける。かとて、思いっきりリーズナブルなものでは雰囲気に乏しい。

    ちょうどよい価格帯の商品は、なぜか見事に売り切れていた。口紅を日常的に使う人たちにとっても、この価格帯のニーズは高いのかもしれない。

    色もいろいろあるが、個人的にルージュの伝言は鮮やかな真っ赤のイメージ。薬局を三軒くらい回って、ようやく色・価格ともにぴったりの口紅を見つけることができた。

    メイベリンの「カラーセンセーショナルリップスティックA917」である。

    まずは本来の用途から

    家に帰って、人生初の口紅オープン。

    鏡に字を書く前に、どれいっちょ唇に塗ってみるか。

    もちろん口紅を塗るのも初体験。肌に触れた感覚は、思ったよりもどっしりしていた。リップクリームよりも硬くてドライな印象だ。

    唇は場所によって起伏があったり厚さが違ったりと、複雑なラインをしている。はみ出さないよう口紅を塗るのって、かなりテクニックいるんじゃないか、と思ったけど、意外とちゃんと塗ることができた。あら、素敵じゃない。

    何見てんのよ

    とりあえず本来の用途を挟んで口紅を安心させたところで、さっそくルージュの伝言を書いていこう。

    1筆目はシンプルに「さよなら」

    ルージュの伝言の歌詞しかり、口紅のメッセージを残すときは、なんとなくネガティブなシチュエーションのイメージがある。大切なコスメをわざわざ無駄にしてまで書くってんだから、よっぽど強い動機がないとやらないはずだ。

    ということで、最初に書く文字はオーソドックスな「さよなら」にした。

    鏡に口紅の先端をあてがって手を動かすと、ヌルヌルした感触とともに深紅の線が伸びていく。口紅が柔らかいからか、ちょっとでも力を入れるとゴリゴリ削られる。加減がなかなか難しい。

    できた。文字の大きさの感覚が掴めなくて改行が入ってしまった。

    怒りを込めておっきな字で書こうとしたけど、ちょっと幅が足りなくて一瞬どうするか悩んだ恋人の気持ちを想像すると、ちょっとカワイイではないか。

    消していく

    さっそく消していこう。今回はルージュの伝言が残されたときの処理対応事例の紹介も兼ねた実用記事でもあるので、消すアイテムも何種類か試してみることにする。

    まずは、どの家庭にもあるティッシュからだ。口紅には油が含まれているみたいなので、ティッシュで拭くとベターっと塗り広がっちゃうのでは、と予想。

    そいや!

    あれ、意外と消えるな・・・

    気合入れてこすったら、一発でけっこう消えるではないか。

    拭いた後に油汚れが残りはするものの、根気よく磨けばティッシュでもあらかた口紅を落とすことができた。最弱を予想をしていたティッシュ氏が存外の働きを見せてくれたので、残りの撮れ高が心配になってくる。

    キッチンペーパーは、より消える

    続いて、キッチンペーパーはどうか。フライパンの油汚れをふき取る時に使ったりもするので、ティッシュよりもさらに対口紅の相性が良い気がする。

    2回目のメッセージはカタカナで小さく「サヨナラ」。

    いじらしく別れを告げる感じを演出しようとしたが、口紅は筆先が大きいので小回りが利かない。小さく書こうとすると結果的に昭和のホーロー看板に書かれた文字みたいな力強さになっちゃうので、ルージュの伝言を控えめに残したいと考えている人は注意されたし。

    字は小さいが、密な分、口紅の量はごってりたっぷりだ。さて、キッチンペーパのお手並み拝見。

     

    おおっ!!!ひと拭きでかなり落ちるぞ!!!

    1回で持っていく口紅の量はティッシュに比べて圧倒的に多い。一拭きごとに折りたみながらやれば、3ストロークほどで油汚れの後も残らないほどきれいになった。

    さよなら、サヨナラ。

    ティッシュの場合、鏡に油分が残るため、完全に綺麗にするには水拭きが必須だったが、キッチンペーパーはその手間もない。とりあえず家にキッチンペーパーがあれば、急なルージュの伝言にも対応できそうだ。

    ウェットティッシュはどうか

    続いてウェットティッシュ。

    書いた文字はドでかく「最っ低」。真ん中に”っ”が入っているのがポイント。ちいさい”っ”が入ることで、取り返しのつかない怒りを買った感がグッと増す。

    私は個人的に、「世の中大概の汚れはウェットティッシュで何とかなる」と思っている。全権の信頼を置いているウェットティッシュ君、さぁ今日もその力を見せておくれ。

    うーん、ぴしゃっと消える!マーベラス!!!

    予想通りの手堅い働きを見せてくれたウェットティッシュ氏。水分が含まれている分、乾拭きの工程が追加されるハンデはある。しかし、キッチンペーパーみたいに一回一回折りたたまずに連続でふき取ることができるので、掃除の時間的にはウェットのほうが楽である。

    アルコール入りのものであれば、同時に鏡の除菌もできるので一石二鳥だ。

    真打ち・メイク落としシート

    今回の企画にあたり、口紅とともに初めて購入したアイテムがある。メイク落としシートである。

    やはり餅は餅屋ということで、メイク落としに特化したアイテムの威力がいかほどのものかを知りたいじゃないか。

    書いた文字は・・・

    「あぁっ!鏡にルージュの伝言が!しかも2番の出だし!!!!」

    でも大丈夫。私にはメイク落としがある。やっちまいな!

     

    「んふふふふっ」と声が出るほど消えた。何だこれスゲェ!

    ウェットティッシュとあんまり変わらないんじゃないか、ちょっと心配したが、杞憂だった。ひと拭きで↓の掃討力。

    ”ころよ”が無くなると英作文の問題感がある

    力を入れなくてもするんと落ち、シートが通った箇所は拭き残しもない。さすがはメイク落としに特化した商品、圧倒的だ。

    1枚でどれくらい落ちるもんか気になったので、さらに鏡いっぱいに文字を書いてみる。

    あの人が残した平家物語も・・・

    残されたシートのビジュアルが色んな意味で重いわ。

    1枚で滅亡。

    あの人との想い出もいっしょに、春の夜の夢の如く消える。

    今回の企画で1本使いきった

    口紅でメッセージを書くの、消すの、どちらも大変楽しかった。まとめると、

    ・時間はかかるがティッシュでも口紅は落ちる

    ・キッチンペーパーやウェットティッシュがあると尚良い

    ・恋人が残してくれたメイク落としシートがあれば、お掃除が楽しくなる

    である。これで、いつルージュの伝言を残されてもへっちゃら。むしろメイク落としめっちゃ余ったから、いくらでも書いてほしいくらいだ。

    ちなみに、今回の実験でちょうど口紅まるまる一本使いきった。これから口紅で誰かにメッセージを残す予定がある方は、書ける文字数の目安になれば幸いである。

    指も使えばもっと書けるかもしれない
  • 「大分弁と楽しむオペラ《愛の妙薬》」中止のお知らせ

    ふ凡社鈴木でございます。

     

    2021年1月16日に予定していた「ベップ・アート・マンス2020」での公演

    「大分弁と楽しむオペラ《愛の妙薬》」

    の上演を中止することになりました。

     

     

    新型コロナの影響が留まることなく、出演者一同ギリギリまで判断に悩んでいましたが、今週末にも緊急事態宣言がまた発令されるかされないかというタイミングで、私含む一部の出演者が東京から大分に移動するリスクを鑑み、あえなく中止の決断と至った次第です。

    本公演を楽しみにしていただいていた方々には大変申し訳ございませんが、我々としても苦渋の決断、どうかご理解いただければと存じます。

    今回の公演につきましては、必ずやまた別の機会に再演しようという話になっています。

    再起に向けて、引き続き水面下で大分弁マスターに向けて邁進していくつもりでございます。

    コロナの少しでも早い終息と、皆さまの健勝を心よりお祈り申し上げます。

    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

     

    ふ凡社鈴木

     

     

     

    ということで、愛の妙薬を泣く泣く延期することになった。

    本番まで限られた時間の中、メンバー一同稽古とすり合わせを丁寧に進めていたので、心から惜しい限りである。

    特に、二人で会話するシーンが多い大田翔さんとは、二人で超広いカラオケのパーティールームを借りて、ソーシャルディスタンスを完璧に確保しながら隠れキリシタンのように稽古を進めていたから残念だ。

    大分弁には「○○なんじゃ」という語尾が頻出するが、大田さんときたらお笑いコンビの千鳥に取りつかれたイントネーションがなかなか消えず、血のにじむ思いで最近ようやく千鳥を封印したばかりだったというのに。

    ちなみに私は、「怪しげな薬売り」のビジュアルをより怪しげにするため、年明けに髪の毛をピンクがかった茶髪に変えた。公演が中止になった今、ただ髪の毛の色がピンク寄りの茶髪に変わっただけオジサンが残されたわけだ。あな口惜しや。

    コロナの影響は今後も全く予想がつかず、現状再演の見通しをお伝えすることはできないが、このメンバーで再演できる日を心待ちにしつつ、ピンクがかった茶髪を誰に見られるともないまま静かに外出自粛生活に入ろうと思う。

     

  • 「鬼滅を見たくない人」に1日鬼滅を探してもらった話

    「鬼滅を見たくない人」に1日鬼滅を探してもらった話

    どうも、ふ凡社鈴木です。

    この記事は、『鬼滅の刃』を見たくない友人に対して「鬼滅を1回見つけるごとに100円あげたらどうなるか」という社会実験を試みたレポートである。

    てこでも鬼滅をみたくない男

    2020年、『鬼滅の刃』は非の打ち所がないほどに流行った。

    ニュースは連日鬼滅関連のトピックを伝え、街中には鬼滅関連のアイテムが溢れかえり、公開された映画は多くの人の心を震わせ、興行収入歴代1位を塗り替えるという快挙を達成した。

    一方で、当然ながら国民全員が鬼滅を履修している訳ではなく、選択的に「鬼滅を読まない」と決めた人もいる。

    友人のりばすと氏もその1人だ。

    12月23日、Twitterのタイムラインに、りばすと氏による以下のようなツイートが流れてきた。

    逆張りクソオタクのりばすと氏は、鬼滅の社会的影響が大きすぎるが故に己の内なる天邪鬼が発動、「テコでも鬼滅を見たくないモード」に入ってしまったのだ。

    たしかに。この1年、鬼滅に関する情報を1度もみずに一日を過ごすのは至難の業だったことだろう。鬼滅を読んでいない人が、外部から鬼滅を履修するよう圧力をかけられる事態が多発し「キメハラ」という言葉も生まれたくらいだ。りばすと氏の苦労が偲ばれる。

    ふ凡社鈴木は鬼滅が大好きなので、そんな無駄な抵抗に日々神経をすり減らすりばすと氏を憐れむとともに「もう鬼滅を読んで楽になっちゃえばいいじゃん」とたびたび勧誘してきた。ごりっごりのキメハラである。

    ある日のキメハラの様子

    当たり前だが勧誘すればするほどりばすと氏の心は頑なに閉ざすばかり。心の城の堅牢っぷりったるや、無限城の如しという感じである。

    「逆鬼滅の刃チャレンジ」の逆をやる

    もはやりばすと氏を鬼滅に勧誘することはあきらめたが、最近彼が以下のようなツイートをしているのを見かけた。

    なるほど、鬼滅を一日も見ない「逆鬼滅の刃チャレンジ」か。何が彼をここまで頑なにしたのかはもはや問うまいが、ここで一つ興味が湧いた。

    「じゃあ、逆に鬼滅関連の情報を見つけるたびに報酬が発生するとしたら、りばすと氏の心にどんな変化が起きるのか?」

    逆鬼滅チャレンジの逆である。毒に毒を重ねることで毒が裏返ったりしないだろうか。

    やってみたい。勧誘とかそんなのは一旦おいておいて、純粋に実験としてやってみたい。タモリさん、これってトリビアになりませんか?

    ダメもとでりばすと氏に「りばすと、お前もモルモットにならないか」と実験への参加を打診してみたところ、まさかのOKが出た。

    かくして、一大コンテンツと逆張り天邪鬼による奇跡の邂逅が実現したのである。

    鬼滅探しのルールを説明するぜ

    鬼滅探しの旅、ルールは以下の通りだ。

    1、時間は1日、外出してから帰宅するまで

    2、鬼滅関連のコンテンツを見つけたらLINEで鈴木に報告、その場で判定

    3、公式コンテンツは1個100円、非公式コンテンツは1個200円報酬が発生する

    4、1カ所につき1個カウント

    5、1日の予定の中でふと見つけたものだけを加算

    3について、「非公式コンテンツ」とは、店頭の手書きPOPなど、個人の手で作られた鬼滅関連アイテムのことを指す。

    4について、例えば鬼滅関連のグッズが複数集まったコーナーなどを見つけた場合、その場にあるアイテムごとに加算するのではなく、ブロックで1カウントとする。

    5について、鬼滅関連の情報を探すことを「行動の主たる目的にしない」という制限を設けた。ポイントを稼ぐため探そうと思えば、マジで報酬が青天井になることが予想されるからだ。

    あくまで、「普通に生活している中でどれくらい鬼滅にエンカウントするか」という趣旨にのっとってやってもらうことにした。

    さぁ、この条件でりばすと氏はいったいいくつの鬼滅に出会うのか。彼の内に何が起きるのか。

    出かける前から鬼滅

    年末の某日、りばすと氏による鬼滅探しの一日がスタートした。

    さぁ1発目はどこで見つけるかしら、と思ったら、秒で報告が来た。鬼滅の主人公、炭治郎の声を務める声優・花江夏樹さんをテレビで見たそうだ。なるほど、メディアでの遭遇パターンもあるのか。

    家を出る前からいきなり”1滅”獲得だ。そこから外出20分くらいで、また通知がピロリ。

    うむ、間違いない、確信犯だ!

    なんと、外出1発目から非公式が飛び出した。確たる情報は一切書かれていないが、これはもう間違いない。

    その後も、出るわ出るわの発見報告。

    Twitterを開けば日輪刀のプロモにあたり

    ゲーセンに行けば鬼滅のプライズを見つけ
    音ゲーをやれば「紅蓮華」がTOPに表示される
    電気屋は鬼滅コーナーだらけ

    もうほんとうに、街中どこに行っても鬼滅にあたるのだ。ここで、りばすと氏が「なぜ鬼滅に囲まれているように感じるのか」について一言。

    電気屋では、同じ建物の中でも鬼滅コーナーが点在していたという。

    当たり前と言えば当たり前だが、狭い空間のなかで複数の鬼滅関連の情報が展開されている、という現象がそこかしこで起きているがゆえに、鬼滅を読まない人にとっては「世界が鬼滅に包囲されている」という錯覚を覚えてしまうのかもしれない。

    ある種、血気術のような感じなのだろう。

    Web業界にいる人間にしか伝わらない血鬼術解説
    ちっ、まだ正気は保っているようだ

    血鬼術にあてられたりばすと氏はその後、鬼滅以外の情報も鬼滅に見えてしまう現象がちょいちょい発現することになる。

    緑と赤の配色を見ただけで鬼滅を連想してしまう

    確かに、赤い筆文字のグルグルを見るとそれっぽく見える

    りばすと氏はその後も、順調に鬼滅とのエンカウントを重ねていく。

    2回目のTwitterエンカウントを経て、りばすと氏はネットを開くのをやめた
    見なかったことにしようとしても逃れられない人
    隙あらば鬼滅の情報を流し込む鈴木

    ブーブー言いながらも律義に鬼滅を見つけてくれるりばすと氏。そうこうしている間に、獲得報酬は1000円を超えた。

    結局、トータルで何滅稼いだのか

    鬼滅をみない人による鬼滅探しの旅は、いよいよ大詰め。

    「鬼滅ハイク」についてはこちらの記事を参考にされたし
    久しぶりの2滅
    手描きの非公式POP、クオリティも売り方もバラエティに富んでいて面白い

    そして、ついに迎えた最終局面。ラストは意外な2滅だった。

    雑岡義勇

    いや、クオリティ雑か!!!!!!!!!

    素晴らしい、マジで一日鬼滅だらけだった。「注意して探してみたら案外エンカウント数少ないかも?」と心配していたが、杞憂だった。冨岡杞憂だ。

    これこそが悪夢ですわ、ガハハ(乾いた笑い)

    結果発表!いったい何滅稼いだのか

    さて、りばすと氏が稼いだ報酬を計算してみよう。

    • 朝のテレビ→1滅
    • Twitter広告×2→2滅
    • 手書きPOP×2(煉獄さん保険、靴下)→4滅
    • クレーンゲーム→1滅
    • 音ゲー→1滅
    • 売り場×3(ヨドバシ・ロフト・鬼ディーランド)→3滅
    • 鬼滅迷子の女の子→1滅(ボーナス)
    • 自販機→1滅
    • 居酒屋の雑岡義勇→2滅

    計16滅、値にして1600円の獲得ナリ。

    報酬は滅封筒に入れて進呈

    なんだろう、もっとこう、報酬が出ることでりばすと氏の鬼滅に対する姿勢が少しは懐柔するかと思ったが、びっくりするほど仏頂面だった。

    りばすと氏に感想をインタビューする

    さぁ、りばすと氏に今回の感想を聞いてみよう。

    鈴木:どうでした、今回鬼滅を自ら探しに行ってみて

    りばすと:なんとなく鬼滅がありそうだな、と予感した場所は大丈夫だったんですが、予想外のところでエンカウントする「不意打ち滅」に出くわした時はかなり気が滅入りましたね

    鈴木:1回につき100円も貰えるのに?

    りばすと:報酬がもらえるとしても…いや、1回につき100円もらえるな、と思って探している自分は正直いました

    鈴木:心のどこかに?

    りばすと:はい、心のどこかに(笑)予想した先で鬼滅を見つけた時は、ポイント稼ぎ的な意味でやったね!ってちょっと思いましたけど、予想してない時にやって来る鬼滅はやはり「滅」の気持ちになりましたね

    うん、なるほどなるほど。やはり報酬系が刺激されるからとて、りばすと氏の鬼滅に対する頑なな気持ちが大きく変わることはなかった。

    でもいいのだ、この企画は、あくまでりばすと氏の心に変化が起きるかどうかという事実を確認することが主であり、彼に鬼滅を好きになってもらうことが目的ではないのだから。

    鈴木:やはり、ダメなものは駄目だったんですね。

    りばすと:うん、そうですね。でも実は私…

    鈴木:うん

    りばすと:その翌日、映画を観に行きました

    鈴木:マジで!?!?!?!?!?なんで!?!?!?!?

    このやり取りを思い出してほしい

    鈴木:しかも、本編未履修だったんでしょ?

    りばすと:うん。そうですね。

    分からない。何を言っているかさっぱり分からない。たとえ地球が反対にまわっても、りばすと氏が鬼滅を履修することはないだろう、と思っていたのに。いったい何が起きている。

    鈴木:えっ、でっ、どうだったの?

    りばすと:いやぁ、面白かったっすね。煉獄さんめっちゃカッコよかったな

    鈴木:wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

    完全に懐柔されているじゃねぇか。りばすと氏いわく、映画は漫画やアニメ本編を履修していない初心者の人でも楽しめるような工夫がなされていて、大変良かったという。今までのやり取りはいったい何だったんだ。

    鈴木:てことは、鬼滅に対する心象はもう・・・?

    りばすと:だいぶ良くなりましたよね。煉獄さんかっこいいなって。アニメも2クール目から見ようと思いました

    鈴木:それでも1クール目は復習しないんだ

    りばすと:はい、映画でだいたいこれまでの流れ分かったんで、2クール目からで大丈夫です

    【結論】

    鬼滅を見たくない人は、報酬アリで鬼滅を探すと1日1600円獲得し、その後映画を観たくなる

    こうして、世界にまたひとつ新たなトリビアが生まれた。

    まさか、最後りばすと氏が映画を観に行くエンドになるとは塵ほども想像していなかった。マジで、それくらい幾度となくキメハラを撥ねつけられてきたのだ。まさに「よもやよもや」である。

    年の瀬の忙しい時期に、意味不明な企画に乗ってくれたりばすと氏に心より感謝を申し上げるとともに、今後の彼の鬼滅に対するスタンスの変化を引き続き追っていきたい。

    それでは皆さん、良いお年を!

    でもやっぱりその顔なんだ
  • 【告知】「ベップ・アート・マンス2020」出演のお知らせ

    【告知】「ベップ・アート・マンス2020」出演のお知らせ

    ふ凡社鈴木でございます。

    突然だが、イベントの告知をする。

    2021年1月16日、大分県別府で開催される「ベップ・アート・マンス2020」にて、

    大分弁と楽しむオペラ『愛の妙薬』

    という演目に出演することになった。

     

    ・ソプラノ歌手の小村朋代さん
    ・歌手の大田翔さん・田中俊太郎さんによる声楽ユニット「SiriuS(シリウス)」
    ・ピアニストの古賀美代子さん

    と共演する。

    本業Web編集者が、プロの音楽家と同じステージに立つ。なぜこんなことになったのか、私自身もよく分かっていないが、記念すべきふ凡社初のコラボ企画である。

    ノリとフィーリングで走り出した僕ら

    始まりは、友人であり、このブログの企画にも何回か参加してくれている大田氏からの連絡だった。

    「ソプラノ歌手の小村朋代さんが、このイベントで『 ふ凡社鈴木となにか一緒に出来ないか?』って言ってるんだけど、どう?」

    一緒に送られてきたチラシには、「ベップ・アート・マンス2020」とあった。

     

    ベップ・アート・マンスは、大分県別府市で毎年行われているアートイベント。期間中、さまざまなジャンルのアーティストが、別府市の施設を使って展示やパフォーマンスを行う企画らしい。

    聞けば、小村さんは大田氏と大学時代からの付き合いで、大田氏づてにこのブログを読んでくれていたのだという。小村さんもふ凡社鈴木も大分出身ということで、今回声をかけてくれたのだ。

    鈴木「つまり…コラボの打診ということ?」

    大田「そうw」

    鈴木「嘘でしょwwwwやるやるwwww」

    まさか、この「人里離れた山奥にひっそり佇む庵」みたいな当ブログに、コラボが舞い込む日がこようとは。ノリとフィーリングの二つ返事で企画がスタートした。

    大分弁とオペラを融合するぜ!!!

    後日、小村さん、大田氏、ふ凡社鈴木の3人で「具体的に何をやるか」の会議を開いた。

    大田氏もスケジュールが合えば参加してくれるとのことで、『プロの歌手2人が出るなら、やっぱり歌うパフォーマンスがよいのでは』という話になるのは自然な流れ。

    いくつか案が出る中、大分県のアートシーンを盛り上げ、地元に恩返しをするという意味も込め「大分弁とオペラを融合する企画をやる」と決まった。

    選んだ演目は、イタリアの巨匠ガエターノ・ドニゼッティによる傑作「愛の妙薬」だ。

    「愛の妙薬」はイタリアっ子純情ラブコメディ

    「愛の妙薬の」あらすじをカンタンに紹介しよう。

    主人公は、「純情」だけが取り柄のさえない男・ネモリーノ。彼は高嶺の花のお嬢様・アディーナにぞっこんだが、全く相手にしてもらえない。

    ある日、ネモリーノは街の外からやってきた”怪しげな薬売り”から、飲めばモテモテになる「愛の妙薬」を購入する。

    もちろん、妙薬はニセ薬なのだが、その薬を飲んだネモリーノの身の回りにどんなことが起きるか…

    こんなストーリーとなっている。今で言うところの、純情ラブコメディという感じだろうか。この話をベースに、大分弁の語りをハイブリットした作品を作るのだ。

    大田「僕がネモリーノ、アディーナは小村さんがやるとして。鈴木くんは、怪しげな薬売りをやってくれる?」

    鈴木「楽しそう!やるやる!!」

    私は、大分弁の脚本作成をメインで担当する心づもりでいたが、語り役として、怪しげな薬売りのキャストもおおせつかった。舞台の経験は多くないが、「歌わなくてもダイジョウブなら、なんとかなるだろう」と思ったのだ。

    それってひょっとして

    しかし、続いて大田氏が発した言葉で、事態が大きく変わる。

    大田「あっでも、ネモリーノの恋敵・ベルコーレ役も必要だから、田中俊太郎さんにも声掛けてみよう」

    小村「そうだね」

    鈴木「えっ、SiriuSとして出演するってこと?」

    大田「そうなるね」

    大田氏は、バリトン歌手の田中俊太郎氏とともに、声楽ユニット「SiriuS」のメンバーとして活動している。

    SiriuSは、日本コロムビアの所属。日本コロムビアと言えば、朝ドラ「エール」のモチーフとしても注目されている、大手も大手のレコード会社だ。SiriuSとして出演を打診する場合、当然事務所を通す必要がある。

    鈴木「もしSiriuSのお2人が出るとして」

    大田・小村「うん」

    鈴木「プロのソプラノ歌手、テノール歌手、バリトン歌手、ピアニストが揃うわけですよね」

    大田・小村「うん」

    鈴木「ふ凡社鈴木、いらなくないですか?」

    大田・小村「wwwそんなことないよwwww」

    そんなこんなを経て、無事日本コロムビアさんからのGOサインもいただき、超豪華な企画になることに相成った。本当に、人生何が起きるか分からないものだ。

    しかし。現状、ふ凡社鈴木と共演者の皆さんとの間には、マリアナ海溝よりも深い経験値の差がある。

    皆さんの足をくれぐれも引っ張らぬよう、私は今から1月の本番まで2か月間、「怪しげな薬売り」として生きることを誓った。

    イベント概要

    今回は、ひとまず告知まで。概要は以下の通り。

    大分弁と楽しむオペラ『愛の妙薬』(「ベップ・アート・マンス2020」登録プログラム)

    日時:2021年1月16日(土)

    場所:別府ブルーバード会館 3階フレックスホール (大分県別府市北浜1丁目2-12)

    時間:13:30開場、14:00開演

    チケット:一般・2000円、学生・1000円

    予約:tickets.tomoyokomura@gmail.com

    (ふ凡社オペラ部)

  • 泥棒になって「盗めるアート展」に行った話

    泥棒になって「盗めるアート展」に行った話

     

    画像はギャラリーの公式HPより

     

    「盗めるアート展」が2020年7月10日に開催された。その名の通り、全ての展示品の中から、1点だけ盗んで持ち帰れる展覧会である。主催はsame galleryさん。アートの世界が、長年に渡って宿敵としてきた「盗む」という行為を、敢えて認めるという超エキセントリックな試み。アートすぎる。

     

    SNSで「盗めるアート展」の存在を知り、そのままAmazonで唐草文様の風呂敷を注文した。泥棒の恰好をして、正々堂々盗みを働くことを決めたのである。

     

    結論から申し上げると、当日の「盗み」は、色んな意味で混とんを極めた。まさしく、日本のアートシーンに残る強烈な一日だったと思う。奇妙な一夜の泥棒道中を、まるっとお伝えする。

     

     

    泥棒、日本の泥棒に決める

     

    正面玄関から盗みを働ける貴重な機会。こんなチャンス、人生二度とこないだろう。ならば「盗みに来ました」と一発でわかる、ストレートな誠実さをもって挑みたい。

     

     

    強盗、怪盗、ギャングなどなど、古今東西、盗みを生業とする人たちのテンプレートは数ある中、私は「日本の泥棒」を選んだ。唐草文様の風呂敷をしょって、同じく唐草文様の手ぬぐいを鼻に巻いた、ダサくも親しみのある姿。現代アートという響きの対極を行く芋臭さである。

    どのサイズが来ても対応できるように、一番大きな風呂敷を買った

    会場ではさぞ浮くことだろう。だからこそ、人がたくさんいても、正しく泥棒と認識してもらえると思ったのだ。

     

     

    泥棒、到着早々バレる

     

    「盗めるアート展」のルールは以下の通りである。

     

    • 盗みは7月10日の午前0時から開始
    • 会期中は24時間、無人でギャラリーを開放する
    • 盗める作品は、1組1点
    • 作品がすべて盗まれ次第終了

     

     

    深夜に始まるという非日常感が、すでにワクワクする。SNSでだいぶ話題になっていたから、きっとたくさんの人が訪れるだろう。せっかくなら泥棒一番乗りになりたいので、私は当日19時につくように会場に向かった。

     

    ギャラリーに到着すると、既に会場は空いていて、中にたくさんの人がいた。オープニングセレモニーをやっていたのだ。扉に掲載された張り紙には

     

    「盗みは0時からです。時間までギャラリーの前に集まらないでください」

     

    という旨の注意書きが貼られている。うーむ、早く到着しすぎたようだ。はっは、どうしよう。

     

    なるべく邪魔にならず、静かに待てるところはないか。ギャラリーの中にいる人たちは、見た感じ関係者もたくさんいる。一方私は、なんつったって唐草の風呂敷をしょっている。一発で泥棒側の人間とわかるから、関係者に紛れることもできない。大変困った。

     

    泥棒全景

     

    ある意味泥棒らしい挙動不審さで会場付近をうろうろしていたら、声をかけられた。

     

     

    「あっ!泥棒がいる!」

     

    「マジか!泥棒だ!」

     

    「めっちゃうける!写真撮ってもいいですか?」

     

     

    どうもこんにちは、そうです、私が変な泥棒です。

     

    声をかけてくださった方は、関係者の方だった。

     

    「仕込みじゃないですよね?」

     

    「雨で足元冷たいですけど、よろしくお願いしますね」

     

    これから作品をタダで盗もうという輩に、温かい声をかけてくださる。ほっとした。ありがたい、泥棒の存在は赦されたのだ。

     

     

    泥棒、次第になじむ

    オープニングセレモニーは21時くらいまでやっていて、ギャラリーの中を自由に見ることができた。しかし私は、敢えて何も下調べをせず、直感で盗む作品を決めたかったので、会場を覗きたい気持ちをぐっとこらえて、外で待つことにした。

     

    外で待っている間、メディアの方や、出展者の方からちょくちょく質問を投げかけられた。

     

    「はい、初めての泥棒ということで、わかりやすい服装で参りました」

     

    「公に盗むことができる機会なんて、これが最初で最後かもしれないので、とても楽しみです!」

     

    「その場で直感的に盗みたいので、あえて下調べはしておりません」

     

    「できれば、なるべく大きな作品を盗んでみたいですね!」

     

    ビジュアルがぶっちぎりで胡散臭い分、それ以外の部分では極力清廉潔白な盗人でありたい。皆さんからの質問に、つとめてハキハキと答えた。次第にいろんな方から「なんか、やたら腰の低い泥棒がいる」と認知され、「応援してます」「盗み、頑張ってください」と温かい声をかけてくださる方もいた。泥棒が社会的に受け入れてもらえる空間、なんて素敵なんだろう。

     

     

    泥棒、潜む

     

    21時のオープニングセレモニーが終わり、会場には、テレビや映画でよく見る「立ち入り禁止」のテープが貼られた。

    わくわくする演出

     

    「会場の前では待たないでください。せっかくなので、泥棒っぽく、近くに潜んでいてくださいね」

     

    すでに会場に訪れたライバル泥棒さんたちもたくさんいたが、一旦ギャラリーの前から離れ、各々潜む時間が始まった。その後も、会場近くに人が溜まりそうになったら、定期的にスタッフの方が散らしていた。

     

     

    私は、泥棒の姿のまま潜むことに決めた。ただ、ビジュアルは泥棒そのものなので、おまわりさんに見つかると職質される可能性が極めて高い。近隣住民の皆さまの心象も穏やかでないだろう。とはいえ、人の集まり具合がどうなるか予想できないので、なるべく会場付近にいたい気持ちもある。

    どこからどう見ても怪しい潜み姿

     

    「迷惑をかけずに潜める場所はないか」

     

     

    いろいろ考えた末、ギャラリーの階段下の暗がりに潜むことにした。関係者の方に見つかったら、とがめられるかもしれないので、緊張の時間が流れる。

     

    関係者の方が階段を上り下りするのを、何回か気づかれずにかいくぐることができたが、ついに見つかった。

     

     

    「あっ、泥棒」

     

    泥棒、万事休すである。

     

    泥棒「すみません、こちらに潜んでおりました。散ったほうがよろしいですよね」

     

    「いや、大丈夫ですよ(笑)凄いですね、気づきませんでした」

     

     

    えっ、いいんですか?マジで?関係者の、泥棒に対する優しさが凄い。私はありがたくその場で待たせてもらうことにした。これで、一安心である。

    椅子まで使わせていただけた。快適に潜む泥棒

     

    泥棒、焦る

     

    開場の時間が近づくにつれ、徐々に、会場周りに人だかりができ始めた。スタッフにとっても予想以上の人の集まりだったようで、散らすに散らせなくなっているようだった。

     

    「これ、ひょっとすると何も盗めないんじゃないか」

     

    一抹の不安が頭をよぎる。

     

    「希望者が多い作品は、じゃんけんで決めてもらうことになりました」

    「大きな作品は10点くらいで、小さい作品が100点くらいあるので、何も持って帰れなかったということにはならないんじゃないかと」

     

    関係者の方は、階段下に潜む泥棒にこまめに情報を共有してくださった(本当に優しい)。なるほど、それなら少し希望が見えてきたぞ!期待に胸が高鳴り、だんだん気が気でなくなっていく。

     

     

    泥棒、流される

     

    開場15分前になると、もう列すら作れないほど人が集まっていた。会場周りにも、張り詰めた空気が漂っている。泥棒は階段の下を出て、ギャラリー入り口の端っこのほうで待機することにした。

     

     

    「ちょっともう、大変なので!予定より少し早めに開けます」

     

     

    スタッフが人だかりをかき分け、テープを外しにかかった。予定より早い開場に、戸惑いが走る。ちらりと後ろをみると、道路を渡って人の波が押し寄せてくるのがみえた。

     

     

    「あっ、これやばいな」

     

     

    そう思ったときにはもう遅かった。ギャラリーに電気がついた瞬間、私は人の波に押し流された。

     

     

     

    泥棒、戸惑う

     

    (会場に入った後の写真はない)

     

    会場の中で見た光景は、想像とかけ離れた世界だった。

     

     

    我先にとアートをもぎ取る人たち、飛び交う怒号、「逃げろ!逃げろ!」と人込みを押しのけ去っていく人。会場内で転んでいる人もいて、大変危なかった。

     

    その様子は、泥棒というより、略奪である。

     

     

    「あぁ、人間ってこうなっちゃうんだ…」

     

     

    あまりのことに圧倒された私は、当初の目的を忘れ、ただ作品が運び出されていく様子をぼーっと眺めるほかなかった。

     

     

    「主催者の方はいますか!!主催者の方、出てきてください!!」

     

     

    振り返ると、警察が会場に入ってきていた。開場からものの2分くらいで、全ての作品がなくなった。

     

     

    泥棒、盗む

     

    「とりあえず。とりあえずこの場を去ろう」

     

     

    と踵をかえすと、会場内に巨大な箱が残っているのが目に入った。まわりに人が集まっている。見たところ、美術館などでよく見る、作品を展示するための白い箱のようだ。

     

     

    泥棒「これはなんですか?」

     

    参加者「これも、作品なんです」

     

    泥棒「えっ?てことはこれも盗めるのですか」

     

    参加者「そうです!」

     

     

    何が何だかさっぱり分からなかったが、私は直観で「この巨大な箱を持って帰りたい」と思った。

     

     

    周りに集まっていた参加者に、他にこの作品を欲しい人はいないか確認したところ、手をあげる人はなかった。それもそのはず、箱の大きさは横幅だけで1メートルくらいある。どう考えても、手で持って帰れる大きさではない。

     

     

    「では、こちらの箱、盗ませていただきます!!!!」

     

    高らかに宣言し、箱の周り集まった方の協力を得て、箱を会場の外に運び出した。

    盗み出した直後の様子

     

    外にはパトカーがとまり、参加者たちが入り乱れ、作品をめぐってやりとりしている人たちなどが見えたが、音は頭に入ってこなかった。

     

     

     

    泥棒、白い箱と共に帰る

     

    さて。持ち出したはいいが、この作品をどう持って帰るか。考えている間に、色んな方から声をかけていただき、車で来ていた参加者の方が家まで乗せて運んでくれると申し出てくれた。

     

    私はその申し出をありがたく受け入れ、晴れて家に持って帰れることになった。

     

     

    箱を車まで運ぶ道中、手伝ってくださった参加者の方が、この箱にまつわるエピソードを解説してくれた。

     

     

    作品のタイトルは「一つと3つのホワイトキューブ」。作者はyang02氏。ホワイトキューブとは、ニューヨーク近代美術館で導入された、作品を展示するための白い箱のことで、近代美術の代名詞になった象徴的な存在だという。

    ニューヨーク近代美術館

     

    会場では、この作品の上にホワイトキューブについて解説する紙が額縁に入れて飾られていたが、額縁はすでに盗まれていた。額縁を盗んだ人は、この白い箱が作品の要だと気づいたのだろうか。

     

    話を聞くごとに、放心状態だった私の心に、ふつふつと感動が湧き上がるのを感じた。

     

    会場には、たくさんの人がいて、その多くが「作品を盗む」ために来ていた。それなのに、この作品は最後まで盗まれなかった。

     

     

    よく見ると、箱の表面にうっすら靴の足跡がある。開場してすぐ、私は別の作品を持った人が、何かを踏み台にして外に飛び出す姿を、確かに見た。それがこの作品だったのだ。

     

    「この作品の上に座ったり、物を置かないでください。」の一言が、作品を作品たらしめている

     

     

    この歴史的な混乱の中で、ギリギリまで人の目を盗んだアート。

     

    なんてエキセントリック!!!しびれる!!!!こういうの大好き!!!!!!!!

     

    「他の作品の扱われ方を見てなんか違うな、と思ったんですけど、泥棒さんがホワイトキューブ持って帰るのは、なんかちゃんと腑に落ちました」

     

    車を出してくれた参加者の方が、そういってくれたのが嬉しかった。私たちは、家に帰るまで、不思議な夜の思い出話に花を咲かせた。

     

     

    泥棒、「盗めるアート展」とは何だったのかを考える

     

    翌日、盗めるアート展の騒ぎは、ニュースやSNSなどで拡散された。その多くが「泥棒が暴徒化して大惨事だった」という内容だった。盗まれた作品が、早速フリマサイトに出品されているといった情報も目にした。ギャラリーは翌日、謝罪とともに展覧会の終了をアナウンスした。

     

    私は、いろんな泥棒が、アートに対して色んな愛を持って作品を盗んでいく世界を楽しみたくて、装いから何まで気合を入れて参加した。実際に繰り広げられた光景は、想像とはかけ離れており、悲しい気持ちにならなかったかと言えばうそになる。

     

    しかし。アートへの向き合い方は、人の数だけある。このイベントが広く世に開かれたものであった以上、略奪的な向き合い方もまた、一つのアートとして否定してはならないとも思う。

     

    何よりも大事なのは、私自身は、1泥棒として、曲がりながりにも自分の思い描く理想の形でこのアート展に関わり、大事な宝物をしっかり盗むことができたという事実だ。

     

    私には、荒れ果てた会場に鎮座するホワイトキューブが、パンドラの箱の底に残った「希望」のように見えた。それだけで、十分すぎるほど得たものがあったと思う。そしてこれから先は、参加したアーティストの情報をじっくり調べて、まだ見ぬ作品たちに思いを馳せる、楽しい答え合わせの時間が待っている。

     

     

     

    幸せだ。参加して本当によかった。

     

     

    素敵な体験を提供してくれた主催者、関係者の方々、泥棒を受け入れてくださった参加者の皆さんに、五体投地で感謝を伝えたい。一生記憶に残る、素敵な夜だった。

     

    家に帰って早速「展示」してみた。6.5畳に映える現代アート。

    (ふ凡社美術部)

  • 最強のフェイスシールド飲み会

    最強のフェイスシールド飲み会

    ふ凡社鈴木です。

    新型コロナの影響により、あらゆる場所で「ソーシャルディスタンスの確保」が叫ばれている。そんな中、対策アイテムとして、フェイスシールドが注目されている。

     

    先日ニュースで、「フェイスシールドをつけて呑む居酒屋」が紹介されていた。会社員風の人たちが、無骨なフェイスシールド姿で酒席を共にしている様子は、はた目にとってもシュール。これを見て思った。

     

    「オリジナルフェイスシールドを持ち寄って飲み会をやったら、もっと愉快なんじゃないか」

     

    ソーシャルディスタンスを保ちながら、それぞれが考えた「最強のフェイスシールド」を披露する飲み会をやるのだ。早速知人に呼びかけたところ、5人の有志が集まり、晴れて実現した。奇妙な宴の様子をお伝えする。

     

     

    ルールはいたってシンプル

     

    オリジナルフェイスシールド作りのルールは、以下の通りだ。

    • 自分が「最強」だと思うフェイスシールドをプロデュースする
    • しっかり顔をガードする(フェイスシールドとしての機能を満たす)ものを作る

     

    参加者にはこの2点だけ伝え、それ以外は自由に作ってもらった。果たしてどんなフェイスシールドが飛び出すのか。

     

    鈴木は、竹笠をベースにプロデュースすることにした。

     

     

    めくるめくオリジナルフェイスシールド博覧会

     

    イベント当日は、十分に広いレンタルスペースを借りて、ソーシャルディスタンスの確保を徹底。

     

    宴の第一部は、ファッションショー形式で、それぞれが用意してきたフェイスシールドを披露。自身の最強ポイントをプレゼンしたあと、参加者からのツッコミ及び質疑応答タイムに入る。参加者各々が意匠をこらした、渾身のフェイスシールドたちを、とくとご覧あれ。

     

     

    エントリーNo.1「ヴェネチア幻想曲」

     

    トップバッターはみきぽ氏。じゃん。

     

     

     

    仮面舞踏会用のマスクと、あでやかなレースとを組み合わせたゴージャスなフェイスシールドである。

     

    みきぽ氏の最強ポイント

     ・マスクとレースは、本場イタリアヴェネチアで購入

     ・目の部分には透明のフィルターを入れている。なぜならコロナは目から伝染るから

     ・実家からマスクとレースを送ってもらうとき、母から「よからぬ会に参加するのではないか」と心配された

     

     

    既製品をそのまま使っているかと思いきや、しっかりフェイスシールド用に改造されているのがニクい。細かなこだわりに、会場が湧いた。ちなみに、マスクがゴージャスだから、服装はあえて地味にしたとのこと。バランスのとり方が謎である。

     

    本来あいている目も、フィルムでガード

     

    【参加者のコメント】

     「出だしからゴージャスなのが良い」

     「正しい素材を正しい方向性で正しく使っている」

     「仮面舞踏会用のマスクって、被ると本当に誰か分からなくなるもんだね」

     

     

     

    エントリーNo.2 「未来のロボット」

     

    2人目は、抹茶味のじうがわ氏。じゃん。

     

     

    2人目にして、人ならざる者が登場。オリジナルキャラクターのようだが、いったい何者なのか。

     

     

    抹茶味のじうがわ氏の最強ポイント

    ・2300年、近未来に作られるロボット

    ・ロボットが普通にある時代なので、家事のお手伝いとかやる

    ・頭頂部のひまわりは平和の象徴。作ってくれた博士から『花は平和な時代にしか咲かないからね』と言われてつけた

     

     

    可愛い。まずコンセプトが可愛い。キャラクターとしての作りこみもさることながら、フェイスシールドの機能もしっかり考えて設計されている。目の部分は黒のメッシュ素材をあてがって、視界を確保。飲み会ということで、ちゃんと飲食できるように頭とマスクの間に余裕を持たせている点もグッド。

    虫も殺さない優しさを感じる

     

    ちなみに、生みの親の博士はご存命らしい。

     

    【参加者のコメント】

    「被り物としての仕事が丁寧」

    「あごからドリンクを飲んでる姿が可愛い」

    「博士を安易に死なせていないところがよい」

     

     

    エントリーNo.3「全男子の憧れヘルメット」

     

    エントリーNo.3は、さむ氏。じゃん。

     

    世紀末を舞台にした漫画に出てきそうなのが登場。感染症よりも、物理攻撃からフェイスをシールドしている感があるが・・・。

     

     

    さむ氏の最強ポイント

    ・グレートヘルムという、13世紀あたりにヨーロッパで作られていた甲冑

    ・初期はバケツ型の鉄を被るだけだったが、後に改良されて前が開くデザインのものができた

    ・このフェイスシールドも、前方を開けられるように作ってある

    ・「男子が喜びそうな最強」を追求したらこれになった

     

     

    まずプロダクトとしての完成度がやたら高い。顔のフィット具合や、細かなヘリの処理にいたるまで、大変丁寧な仕事で作られている。さらに前方が開閉式になっていることが明かされた時は、参加者から歓声があがった。さむ氏はこれを一晩で作ったらしく、技術力の高さも高評価だった。

    開閉式で飲食も行軍もばっちり
    【参加者のコメント】

    「確かに、全男子が好きそうなデザインだ」

    「体格と相まって、バイオハザードの中ボス感がある」

    「鉄球を使った遠距離攻撃がすごい面倒なやつね」

     

     

    エントリーNo.4「菜々子さんのダンスパーティー」

    エントリーNo.4は米田梅子氏。

     

     

    どこからどうつっこんでいいか分からないが、とりあえず何者かに体を乗っ取られてる感がある。事情を聞いてみよう。

     

     

    米田梅子氏の最強ポイント

    ・”ダンスパーティー専用”フェイスシールド

    ・市販のフェイスシールドは無骨だから、パーティー用のエレガントなものを作った

    ・上の人形の名は菜々子さん

    ・女の子のスカートにもぐってみたい、という願望をかなえた

     

    TPOをわきまえたフェイスシールドという新ジャンルを開拓。菜々子さんのスカート部分は、100均のプラスチックフィルムで作られており、一般的なフェイスシールドをベースにデザインされているようだ。短冊状のレースをぱらりとめくると、顔を出せるように工夫してあるのも素敵だ。

    スカートをめくれば、不敵な笑みを浮かべる女が顔を出す
    【参加者のコメント】

    「人形と本体、どっちに話かければいいのかわからない」

    「60頭身くらいある人形」

    「スカートに入るという発想が良い」

    「まず下の体を弱らせてからじゃないと本体にダメージが通らない敵」

     

    エントリーNo.5 「ママ友会にお呼ばれした中目黒のタワマン主婦」

     

    5人目は、身委ねた氏。じゃん。

     

    人だ!ちゃんとした人が出てきたぞ!捕まえろ!!!!

     

     

    身委ねた氏の最強ポイント

    ・中目黒のタワマンに住んでる主婦をイメージ

    ・今日は幼稚園のママ友会にお呼ばれした

    ・シールド部分はマジックテープで着脱可能。普通のキャップとしても使える

    ・自分にとっての最強とは、ていねいな暮らしになじむ実用性

     

     

    中目黒のタワマンに住む主婦を見たことがないが、「確かにいそう」と感じる謎の説得力がある。奇妙なビジュアルのフェイスシールドが続く中、普通の人、というだけでしっかり個性が際立っているから面白い。

     

    着脱可能なフェイスシールドというアイデアは秀逸で、実用性の高さにみんなで感心した。ちなみに、キャップの「Distance」は自分で書いたらしい。細かなところで器用な主婦である。

    シールド部分を外せば、普通のキャップとして使える。サスティナブル
    見出し【参加者のコメント】

    「ビジュアルは普通でも、しっかり個性が出ているのが良い」

    「着脱可能なの、普通にアイデアとしてよくないか」

    「ただ、ママ友会に“感謝”って書かれたカレー持ってくる人いたら、若干身構えると思う」

     

     

    エントリーNo.5 「サイケデリック・ペスト医師」

    ラストはふ凡社鈴木。どん。

     

    主に笠部分を作るのに、すげー時間がかかった(10時間くらい)。渾身のこだわりを聞いてほしい。

     

    ふ凡社鈴木の最強ポイント

    ・竹笠を改造したフェイスシールド×ペストマスクの2段ガード

    ・ビジュアルの毒々しさで、物理のみならず精神的なディスタンスを確保

    ・お札をつけたのは、そのほうがなんかカッコいいから

    ・「小学生が図工の時間で作った最強」を意識。設定や文化に統一性がないのがポイント

     

    フェイスシールドの元祖ともいえるペストマスクと、和の竹笠を組み合わせた異文化ミックスフェイスシールド。笠単体ではフェイスシールドとして機能しないので、細い木の棒で骨を延長し、その上に色付き下敷きを使ったシールドを取り付けた。

     

    ちなみに、ペストマスクの先端にはハーブ各種が入った袋を入れており、元ネタに施されていたというおまじないを再現している。

     

    飲食はあご下の穴から。ポッキーが主食。

     

    見出し【参加者のコメント】

    「引き算をしない小学生だ」

    「古今東西詰め合わせの妖怪じゃねぇか」

    「夜道であったら子ども泣くと思う」

    「光当たるとステンドグラスみたいになるのがキレイ」

     

     

    宴の時間

     

    ファッションショーが終了したら、楽しいパーティーの始まりだ。おつまみ、飲み物が乗ったテーブルを中心として、円形に椅子を配置。

    秘密結社の会合っぽい

     

     

    飲食物を取りに行くのは、原則一人ずつだ。奇妙なフェイスシールドたちの視線を浴びながらおつまみを粛々と皿に盛るのが楽しい。

     

    一通り飲み食いを楽しんだら、それぞれのマスクの構造を見せ合ったり、写真を撮ったりしながら、久しぶりの再会を喜んだ。

     

     

     

     

     

     

     

    最後は、ベストフェイスシールドの投票会。目をつぶって「自分が一番好きだったシールドに手をあげる」という古典的な選挙を行った。

     

    栄えあるトップは、グレートヘルムを作ってきたさむ氏に。

     

    さむ氏にはアマゾンギフト券を進呈。腕のリーチをフルに使った授賞式を行った。

     

     

     

    参加者全員が、てんでバラバラのコンセプト・デザイン・こだわりのフェイスシールドを持ってきてくれたことに感動した。「最強の」という言葉をつけただけで、フェイスシールドの可能性は無限に広がるのだ。

     

    制限のある日常を、不要不急の工夫で楽しく彩る。そんな心持ちで、引き続きテンション高く生きていきたい。

     

    (ふ凡社最強のフェイスシールド飲み会実行委員会)