滝行に行ってきた

ふ凡社代表取締役RPG(Regular Pink Green tea)の鈴木です。

 

滝行に行ってきた。

 

 

先日このブログでインタビューした肘@失恋フェス氏が主催する、失恋記念企画に参加したのだ。

初見の方向けに軽く背景を説明すると、肘@失恋フェス氏は、失恋をコンテンツに昇華する企画「失恋フェス」を主宰し、色んなアクティビティに精力的に取り組んでいる。中でも滝行は、肘氏にとって記念すべき最初の失恋企画であり、記念すべき最初の暴挙である。

滝行はその後、失恋フェスを象徴する周年行事として毎年開催され、今年で3回目を迎える。今回は、東京西多摩の臼杵山にある天光寺で行われた。

エンジョイ勢でも滝行をやっていいのか

滝行にあたって、私は「滝に打たれる」以外の情報を何も持ち合わせていなかった。

「滝行?うん、行けたら行く!」

と、”誰かの宅飲み”に参加するくらいの温度感でエントリーしてしまったが、大丈夫だろうか。

 

フリー素材「宅飲み」で出てくる写真

 

寺の領地に入った瞬間、なんか霊験あらたかなセンサーにより、エンジョイ勢であることがばれ、レーザーで焼かれたりしないだろうか。

一抹の不安共に、ひとまず天光寺のHPを見てみた。

画像は天光寺のHPより

 

あっ、ふらっとでいいんだ。よかった。

こうして私は、「ふらっと」「滝に打たれる」の二言だけ握りしめて、武蔵五日市駅に向かった。

まずは滝行の準備から

当日集まったのは、肘氏を含めて11人。回を重ねるごとにじわり、じわりと人数が増えているらしい。改めて、滝行で10人集めることができる肘氏の失恋力の高さに感服するばかりである。

武蔵五日市駅からバスにゆられること40分ほど、山の斜面にそびえる天光寺に到着した。バスの外に出た時点ですでに、若干肌寒い件について、気づかぬふりをする。

天光寺の外観はこんな感じ。(写真を撮り忘れたのでHPより拝借)

 

寺についたら、すぐ滝行に入るわけではない。まずは祈りの基本的な作法についての座学があり、その後に「お百度参り」をやる。もろもろの準備を整えてから、滝へ行くのだ。

まずは、修行用の白装束に着替える。薄い装束の下はパンツ一丁だ。この日は最高気温10度、最低5.2度くらい。うすら予想はしていたが、装束に着替えた時点で、割としっかり寒い。

着替えてからスタッフによる作法の座学を受けたのち、お百度参りへ。

お百度参りは、何かを祈願するために神仏を100回繰り返し拝む礼拝法で、時代劇なんかでおなじみのあれだ。

天光寺では、真言宗の開祖・空海の像に向かって「※南無大師遍照金剛(なむたいしへんじょうこんごう)」と叫びながら走り回る形で行う。

※「南無大師遍照金剛」には「空海に帰依する」という意味がある。今回の修行で随所に登場する重要フレーズだ。

修行開始の前に、スタッフが参加者の「頭・首・足」三か所に「塩と酒」を振って清めていく。

 

装備は、薄手のバスローブが如き頼りなさ。体はプルプルと小刻みに震えている。そんな状態で、冷たいお酒を首筋にかけられるもんだから「ひゅひっ」と小さな声が出る。

いやいや、でもこの程度でひるんではいけない。なんつったってこれから、この数万倍くらいの量の水を浴びるんだから。正気か。

お百度参りはポロリとの戦い

清めを受け、お百度参りに突入する。

ルールを説明しよう。フィールドには、コンクリートでできた一本道が5本ほど用意されている。道は1本5メートルくらいの長さで、前方と後方に2本の柱が立っている。

 

これがお百度参りプレイスだ

 

各道に参加者4人くらいがあてがわれ、前方・後方に分けてスタンバイ。

まずスタート位置で「南無大師遍照金剛!!!」と叫んで一礼し、対岸に向かってダッシュする。

反対側についたら、再び「南無大師遍照金剛!!!」と叫び、一礼。そして、元の場所にダッシュして戻る。で、また叫んで一礼、ダッシュ。これを延々繰り返すのだ。

本来は往復1セット×108回やるそうだが、今回は半日修行ということで15分間のタイムアタックエディションだった。

スタッフ「お百度参り~はじめ!

号令と共に、参加者が一斉に叫び、走り出す。1本5メートル程度の短い間隔とはいえ、連続して走り続けるとこれがなかなかに辛い。対岸についたらすぐ「南無大師遍照金剛!!」と叫んで、またすぐ対岸に走らなければいけないので、息をつく間はほぼない。

そして一つ、余計な誤算があった。帯をしっかり結んでいなかったがゆえに、走っている間に、装束がはだけまくるのだ。

でも、止まって結びなおすわけにもいかないので、手や脇で装束を抑えながら走り続けるほかなかった。イメージとしては、名画「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスが爆走している姿を想像していただければ良い。

 

戦慄のチュートリアル

なんとかポロリを免れ、お百度参りが終了。いよいよ滝行へ向かう。

白装束の集団を乗せたミニバンは、自然豊かな山道をぶいぶい進む。道幅が次第に狭く急になり、車体が揺れる揺れる。視界は背の高い木々で埋まり、「この先、滝、あります。」感が甚だしい。

お寺を出てから約10分後、バスは急こう配な坂道に停車した。体幹をやられながらバスを降りると、視線の先に舗装されていない山道が見えた。ここから先は、歩いて滝に向かうのだ。

山道に入る前に、スタッフから滝行のチュートリアルを受ける。

 

不穏なチュートリアル

滝行の流れは以下の通りである。

1、最初に胸・肩にかけ水する
2、桶の水を頭からかぶる
3、南無大師遍照金剛を3回叫ぶ
4、最初は滝に背を向ける
5、続いて、滝の深くに入る
6、さらに、滝に座って2分キープ

「滝の水は皆さんが思ったより冷たく、重い」

「いきなり滝に入るとパニックになったり呼吸ができなくなる人もいるので、段階踏んでやる」

「滝に入る前にリタイアする人もいるけど、もったいないので2分頑張ろう!」

スタッフの口からは、次々と不穏なワードが飛び出すが、きっと、安全に万全を期すために、多少盛って注意喚起しているのだろう。そう思うことにする。

パット見、割と大丈夫そうな滝

雲行き怪しいまま説明が終わり、滝への山道に入る。山道は、何となく人が通る導線はあるものの、ほぼ自然のまんま。岩だらけの急な道をサンダルで登っていくので、足腰に来る。

ひいひい言いながら、山の斜面に設けられた脱衣所に到着。荷物を置いて、準備を整える。

旅館の温泉に向かう宿泊客ではない

 

いよいよ、滝とご対面。高さ5メートルくらいのところにある岩の裂け目から、景気よく清水が流れて出ている。

思ったより小さめの滝

 

写真を見ていただいたらわかるかと思うが、思ったより、激しくない。水の勢いだけ見れば、スーパー銭湯とかによくある打たせ湯の、“ワイド版”って感じ。

あっなんか、大丈夫そう

と思った。

修行中、「南無大師遍照金剛」を叫び続けるわけだが、連続で叫んで呼吸が乱れないようにするために、滝行中の人と、待機中の人が交互に真言を叫ぶシステムになっている。コールアンドレスポンスというやつだ。

 

鈴木は何を祈ればいいのか。

今回、失恋フェス一行のほかに、もう一団体参加者があった。先にその団体が滝行に入り、我々はしばし待機することになった。

第一陣の皆さんを眺めている途中で、一つ大事なことを思い出した。

そういや、何を祈願するか決めてなかったな

滝行といったら、何か願掛けのためにやるイメージがある。スタッフも、「自分か、誰かのために願をかけてください」と言っていた気がする。しかし私には、これといって”かけたい願”が無かったのだ。

「うーん、せっかくなら自分以外の誰かのために願をかけるか。だれにかけよう」

願掛けと言ったら大切な人。幸せになってほしい人。王道は家族かしら。あっ、でもお世話になっている友達もたくさんいるぞ。いや、やはり、いつも一番近くにいてくれる恋人か…。

ひとしきり悩んだ末、答えが出た。

 

「よし。世界中にいる猫ちゃんの幸せを願おう」

この世に、猫ちゃんの幸せ以上に優先されるべきものなどない。ふ凡社鈴木は、世界中の猫ちゃんたちに幸せを届けるため、滝に打たれるのだ。これが私の生きる道である。はい、決まり!

 

滝の中はワンダ ヘル ワールド

 

無事、滝行の目的も決まったところで、第一陣の滝行が終わった。一人滝に入る前にギブアップした方がいたものの、ほかの皆さんは何の滞りもなく滝行を終えた。

私は、後方で待機している間に緊張も解け、イメトレもバッチり。なんなら早く順番が来ないかなとワクワクしていた。早く、早く猫ちゃんの幸せを祈らせてくれ。

 

前の団体と入れ替わり、失恋フェス一向は滝の麓へ。私の順番は4番目になった。

鈴木「鈴木、行きます!

意気揚々と叫び、水に入る。アドレナリンが出まくっているのか、冷たさを感じなかった。

水に入って、まず山・滝の神様に挨拶する

 

ス「では、体に水を被ってください」

鈴「はい!!!!

景気よく体に水をまぶす。

 

 

これもへっちゃらだ。全然冷たくない。なんつったって私には、世界中の猫ちゃんたちがついている。

ス「はい、じゃあ頭から水を被ってください!」

鈴「はい!!!」

スタッフから差し出された桶を掴み、

鈴「うぉりゃっ!!!!!」

と一気に水を被る。

 

鈴「あっ、やばい、死ぬ」

 

ちょっと、ちょっと待ちたまえ。頭からかぶった瞬間、めちゃくちゃ寒いじゃないか。さっき体にまぶした水はなんだったのかね。あれは嘘かね、君。私をだましたのかね。

ス「はい、南無大師遍照金剛、3回!!!!

スタッフの声で我に返る。そうだ、私これから、この水に打たれるんだった。正気か?

…人間、何やってんだ?

しかし、もう後のフェスティバル。ここまで来たらもう引き返せない。叫ぶしかない。

鈴「南無大師遍照金剛!南無大師遍照金剛!!南無大師遍照金剛!!!

ス「はい、じゃあまずは滝の近くに入って!」

既に、頭がぼんやりしている。足元がおぼつかないまま滝の近くに歩き、

 

レフェリーに安否確認されてるボクサー感ある

 

そのまま滝に背を向ける。

 

 

鈴「なみゅ!!!!」

背中に衝撃が走る。水が、めっっちゃくちゃ重たい!!!

まだ背中の一部を水に打たれただけで、この重さ。鈍器か。

鈴「…ぅたいし遍照金剛!」

一瞬意識が飛びかけたのをぐっとこらえ、何とか真言を叫ぶ。

ス「はい南無大師遍照金剛!」

鈴「南無大師遍照金剛!

ス「南無大師遍照金剛!」

鈴「南無大師遍照金剛!!

ス「はいじゃあ滝に背をつけて!!!」

生まれたての小鹿に等しい体幹にむち打ち、いざ滝の深部へ。

鈴「南無大師へんっっっっ#$&%&’!!!!」

 

 

あたり前だが、滝の直下はもっとやばかった。首筋に、重たい水が絶え間なくたたきこまれる。そしてめちゃくちゃ冷たい。呼吸が詰まる。

ス「はい南無大師遍照金剛!」

鈴「なっ、南無大師遍照金剛!!

ス「南無大師遍照金剛!」

鈴「南無大師遍照金剛!!!!

もうなんというか、コマンドが2つしかないのだ。「息する」か、「叫ぶ」かの二択。ここまで行動の選択肢が絞られた状態、赤ちゃんの時以来である。

ス「南無大師遍照金剛!」

鈴「… nぅあむ大師…遍照金こぉぅ(裏声)!!」

 

 

どっかのタイミングでペース配分をミスったのか、一回叫ぶごとに声が脳の中で反響して、頭が割れるように痛い。でも、止まると呼吸が詰まる。視界はどんどん白くなり、体の感覚はとうにない。

ス「南無大師遍照金剛!」

鈴「南無……

ついに沈黙。MajiでSyoten 5秒前。

 

ついに、声が出なくなった。いかん、このままではドクターストップがかかってしまう。ってか、もう出たい。とっととこの地獄を抜け出したい。

?「まけないで…」

鈴「(はっ!?この声は?)」

?「鈴木、まけないで…!」

鈴「(君はひょっとして…猫ちゃん?)

目を閉じると、額のあたりに三匹くらい猫ちゃんが飛び回っている。

 

そうだ、私はなぜここにいるのか。猫ちゃんの幸せを祈るためだ。度重なる肉体的ショックで、すっかり忘れていた。

なぜ辛いのか。足りないからだ、猫ちゃんへの愛が。

鈴「なむたいしへんじょうこんごう(小声)

枯れかけていた私のパトスが、静かに息を吹き返す。

ス「…南無大師遍照金剛!」

鈴「南無大師遍照金剛」

いったん叫ぶのを止め、自分に聞こえる程度の音で頭への衝撃を緩和しつつ、少しずつ呼吸を整えていく。

ス「南無大師遍照金剛!」

鈴「南無大師遍照金剛(猫ちゃん!)

 

猫「マケナイデ…」

ス「南無大師遍照金剛!」

鈴「南無大師遍照金剛!(猫ちゃん!!)

 

ス「南無大師遍照金剛!!」

鈴「南無大師遍照金剛!!(猫ちゃん!!!)

 

猫「チャオチュールちょうだい」

ス「はい!最後に、南無大師遍照金剛!」

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!猫ちゃんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!

 

 

鈴「南無大師遍照金剛!!!!」

 

 

ス「はい、終わり!!!」

スタッフの腕をつかんで、滝から引っ張り出される。

頭はぐらっぐら。まともに歩けない。額を飛び回る猫ちゃんたちは、気づけば20匹くらいに増えていた。猫カフェか。

何とか滝の入り口に向かって、最後に滝の神様に一礼、山の神様に一礼、そして応援してくれた皆さんに一礼する。

 

猫ちゃんたち、ボク、勝ったよ

 

滝イキリできる側の人間へ

滝を出ると、今までの地獄が嘘のように、視界が晴れていた。なんだか体もぽかぽかしている。

脱衣所に戻る前の道で、参加者の皆さんが「お疲れ様です」と労ってくれた。安心と嬉しさで、自然、満面の笑顔になった。

こうして、人生初の滝行が終わった。マジで、死の淵に追いやられるほど過酷だった。

肘氏にインタビューした際、

滝行を経験した後、なにかと滝の話もちだして、“滝イキり”したくなるんですよね

と話していた。正直まったく意味が分からなったが、実際やって理解した。これはイキりたくもなるわ。

 

これから履歴書を書く機会があったら、資格欄に「滝行、履修済み」と書こうと思う。世界中の猫ちゃんたちに幸あれ。

 

滝行が終わって、自然と一体化する鈴木

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