ご無沙汰しております、ふ凡社です。
この記事は、「詩人・きむのポストカード」ドンピシャ世代の私が、当時まったく共感できなかったきむさんの詩と十数年越しに向き合う話である。
ヴィーナスフォート最終日にヴィレヴァンの90%オフセールに行く
2022年3月27日、お台場の大型商業施設「ヴィーナスフォート」が営業を終了した。最終営業日、私はヴィレッジヴァンガード(以下ヴィレヴァン)の閉店セールを目指して乗り込んだ。
なぜならヴィレヴァンは、ヴィーナスフォートの営業終了にあたって、約1か月にわたり全品90%オフという大胆なセールをやっていたからだ。
最終日に行ったのには理由がある。
ヴィレヴァンを知る人ならわかると思うが、あの店は人気の商品から「誰が買うんだこんなもの」という謎商品まで詰め込んだ、玉石混交の闇鍋みたいな空間。そんなヴィレヴァンで、90%オフセールの最終日ともあれば、「90%オフでも売れ残る謎商品の魔窟」と化しているに違いないのだ。こんなヴィレヴァンめったに見られるものではないぞ。
最終日なのに手つかずで残っている棚を発見
当日、ヴィレヴァンの商品棚からは商品がごっそりと捌け、ところどころに売れ残った商品がなんでんかんでん混ぜこぜで積まれていた。もはや「陳列・整頓・分別」の概念を失ったガレージセール状態である。
商品の残った箇所を一つ一つ見ていくと、想像通り、目ぼしいものが全然見あたらないステキ空間が広がっていた。残っていた主な商品は
・古い型のスマホケース
・アイドルやアニメのグッズ
・アニメやアーティストのコラボTシャツ
・激安の靴や衣類
といったものだった。もともと激安だった商品を除いては、一部のファンやユーザーにしか刺さらないピンポイントな商品が残ったようだ。中には数年前までは飛ぶ鳥を落とす勢いで売れていたアニメやアイドルのグッズもあり、流行りすたりのサイクルの早さをしみじみと感じた。
せっかくだから、何か買って帰りたい。でも、マジで欲しいものが見つからない。どこか、どこかに私にピンポイントで刺さる商品が残っていないか。すがる思いで探していると、ほぼ手付かずで商品が残っている不思議な棚を見つけた。ポストカードの棚である。
「何がこんなに残ってるんだ…あぁっ!!!!!」
近寄ってみて、私は悲鳴を上げた。
「詩人・きむのポストカードだ!!!!!」
説明しよう。詩人・きむのポストカード(以下、きむのポストカード)とは、エモい写真をバックに、詩人の“きむ”さんが綴ったエモい詩を印刷した、エモいポストカードである。
2000年代の初めくらいにそれはもう大ヒットし、当時ヴィレヴァンはもちろん、若者向けのショップには必ずと言っていいほど置いてあった。
当時小中学生くらいだった私は、そんなきむのポストカードを……心から敬遠していた。典型的な日陰の思春期を過ごしていた私は、きむさんが発信する眩しすぎる作品を直視できなかったのだ。
そんなきむのポストカードが、棚いっぱい残っている。しかも90%オフ。私は思った。
「これが、きむのポストカードと正面から向き合う最後のチャンスかもしれない」
抜けども抜けども新しいカードが出てくる
私は意を決し、棚に残っているカードを片端からピックアップしていった。とにかく種類が多いもんだから、棚から抜けども抜けども、サメの歯のように新しいカードが出てくる。
「棚に残っているカードを全種類買ってやる」という野望を早々にあきらめた私は、気が済むまでカードをピックアップすることにした。
購入したカードがこちら↓
大量大量。手書きの文を誰かに送る機会がめっきり少なくなった昨今、これだけあれば、きむのポストカードだけで一生分のはがきを賄えるのではないかと思うくらいには集まった。
値段は1枚165円。これが90%オフだから16.5円。これだけ集めても、きっとお値段は相当に安いだろう。ほくほく顔でレジに向かったところ、合計金額はなんと2000円くらいだった。え、なんで!?
よくよく確認したところ、ある見落としをしていたことに気づいた。こちらのパックをご覧いただきたい。
165円の値段の横に、「16」の文字。これなんと、「同じカードが16枚まとまってますよ」というサインだったのだ。いや、わかるかい!!!!
「束になってるやつは、とりわけ在庫があったから安いんだろうな」なんて思っていたが、そんなことはなかった。きっちり16枚分の値段が加算されていたのである。
思わぬトラップにずっこけたが、でもいいんだ。大人の私には決して買えない値段ではない。90%オフの大人買いを甘んじて受け入れて、ヴィレヴァンを後にした。
購入目録
購入したきむのポストカードは、大きく分けて3種類の販売タイプがあった。
・単発カード
・激渋まとめ買いセット
・ランダムブースターパック
「単発カード」は、その名の通り1枚だけで売られているもの。単純にフィルムケースに入れられているだけのものと、「○○なあなたへ」みたいな感じでフィルムケースにテーマが書かれているものとがある。購入後に数えたところ、これが32枚あった。
「激渋まとめ買いセット」は先述の、同じカードが何枚も入ってるやつである。
「ランダムブースターパック」は、種類が異なるカードが6枚入っている。先述の「激渋まとめ買いセット」を見た後だったので、「そうそう、本来まとめ買いパックってのはバラエティ豊かに入ってるもんだよなぁ」と思いながら開封したところ、いくつかのセット内で、6枚の中にもダブりがあるものを発見してしまった。
きむのポストカードにはそりゃもうたっくさん種類があるのに、6枚セットの中にダブりを入れてくるなんて「人の心とかないんか?」とちょっと思ってしまった。
そのほか「がんばれ受験生!」「心躍る仲間へ」という異なるテーマのケースの中に同じカードが入っていたり、背景の写真が変えただけの同じ詩カードがあったりと、一消費者として販売方法にいくつか疑問が残るポイントはあるものの、それは詩本体の評価には一切関係のないことなので置いておこう。
さぁ準備は整った。いざ、きむさんの詩に向き合っていこうではないか。
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