脚本家が楽しい時 「ベタな縛り」を設定された時

ふ凡社代表鈴木です。

新たに書く脚本のお話。

鈴木は、「プリズム」という名の若手役者が集まる団体に所属している。それぞれ個人の活動を尊重しつつ、その時々で集まれる人同士で舞台をやったり、即興劇の公演をやったりと、一つの活動の拠点になるような団体だ。

昨年末、主催の平野竜也という男から、19年秋に行われる、ある演劇祭のための脚本を1本書いてほしい、という依頼があった。オッケーバブリーと2つ返事で引き受け、2月末の提出に向けて、1時間~1時間半ほどの作品を書くことになった。

派手すぎない違和感から「破壊」していく戦法

作品を作るにあたって、平野氏からいくつかストーリーの条件をもらった。

 

・設定は日常。SF的な展開は使わない

・物語の始まりはカフェから(店はチェーン店)

・主な登場人物は、店員と2組の常連客(顔なじみではない)

・店員と2組の客は、それぞれの悩みを抱えている(仕事、夢、恋愛関係など)

 

カフェを起点に、それぞれの登場人物にスポットが当たって、物語が展開されていくという流れになりそうだ。

まず一発景気よくツッコミを入れさせていただきたい。

条件、ド定番過ぎじゃん?

あらゆるジャンルの創作物で使い古しに古されたストーリーのフレーム。この条件に沿って普通に物語を作っていけば、超ありがちな展開の面白みに欠ける人情劇が出来上がってしまうだろう。

しかし、脚本家としてはこれがかえってうれしい。ありがちな縛りがあるからこそ、いかにして観客の意表を突き、オリジナリティを出すか考える楽しみが生まれるからだ。

 

さて、脚本を書くにあたって、何から始めるか。作品の根っことなるテーマ設定から?登場人物の構成から?色んなルートがあると思うが、私の場合は頭の中にぱっと思い浮かんだシーン・セリフを皮切りにすることが多い。やってみたい場面から逆算して、そこに着地するために周りの物語を埋めていく、というイメージだろうか。テーマや伝えたいことは、書いてる内に後から定まっていくのだ。

今回の場合、「ありがちな状況を破壊する」という視点から出発して、まずは「チェーンの飲食店」という舞台に注目した。チェーンの飲食店でまず起こりえないことって何だろう。強盗が入ってくるとか、わかりやすい破壊はあまり使いたくない。日常では普通に行われるけれど、この場面では決定的にふさわしくない、そんな奇妙な違和感を生みたいのだ。

 

店員が注文を取ってる最中に、スマホで普通に通話し出す

 

なんてどうだろう。常識的に考えて、まずあり得ない展開だ。戸惑う常連客をよそに、店員は通話を続け、そのまま店の外に飛び出してしまう。残された2組の常連客は、目の前で起こった珍事をきっかけに接点を持ち、流れに任せて互いの現状を伝え合う・・・

うん、導入としてはいい感じではないか。あとは、ここを足掛かりに一つ一つ足場を繋ぐように物語を具体化していけばよい。これで行きましょそうしましょ!

どんな作品になるのか、作者も全く読めない手探りの旅、ハクナマタタ!

ふ凡社演劇部 鈴木

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