―ふ凡大陸Vol.3―「とにかく死にたいエッセー漫画家」男女交際めちゃハメ写メール清廉性

ある日、カニカマボコを食べながら思った。

 

「最近TwitterやSNSでエッセー漫画を発信している人たちがたくさんいるけど、彼らは一体どんな考えで作品を作っているのだろうか」

 

 

 

男女交際めちゃハメ写メール清廉性氏をご存じだろうか。日常で何気なく感じた一コマを切り取って、ヘタウマな絵でエッセー漫画化してTwitterで発信している人だ。

イカれた名前からしてお察しの通り、彼女は作品にエロネタもふんだんに盛り込んで来る大人なアーティスト。さるイベントで知り合ってから、頭の中どうなっているのか話を聞いてみたいと思っていた。

 

日常のそこかしこに潜む“ふ凡人”にその生き様を聞く、シリーズ「ふ凡大陸」。第三弾は、男女交際めちゃハメ写メール清廉性氏だ。

 

ヘタウマな絵に隠れた芸術性

 

最初に断わっておくと、彼女のペンネームはオイヌマハルカで、「男女交際めちゃハメ写メール清廉性」はTwitterアカウント名だ。

彼女からは「記事にするときはオイヌマハルカを使ってください」と言われたが、男女交際めちゃハメ写メール清廉性のほうがインパクトがあるので、無視してめちゃハメ名義でお送りする。

 

めちゃハメ氏は、日常生活の中で感じた色んなことをヘタウマな絵で4コマ漫画やイラストにして発信している。一見雑に描かれているようで、ところどころ絶妙に写実的な描写があって読みやすく、中でもエロネタが良い。アホらしさ全開のライトなエロを大胆軽快に描いており、笑えるのだ。

 

 

「袋とじ」を巡る父と娘の愛のストーリー(適当)

 

 

1月某日、鈴木とめちゃハメ氏は都内の猫カフェにいた。彼女の創作の様子も見せてもらいたいので、「対面でなく並んで座れる場所のがよかろう」、ということで猫カフェになったのだ。

 

鈴「本日はよろしくお願いします」

 

め「えへへ」

 

鈴「早速ですがめちゃハメさんは・・・」

 

め「あ、まずこれを見てほしいんです

 

鈴「え、あ、いきなり?」

 

め「はい。私、こんなのもやってますよ、ってのを知ってほしくて」

 

めちゃハメ氏、おもむろにiPadを手渡し、動画の再生を促す↓

 

 

 

鈴「…………」

 

め「どうでしょう?」

 

鈴「……めちゃすごいじゃないですか!!!!!!!!!!!!

 

なんだこのアーティスティックな才能。この人超絵上手いじゃないか。いや、むしろあのヘタウマなエッセー漫画はいったい何なんなんだ。

 

め「えへへ。これはモーションペイントというやつで、前友達と組んでやったんです」

 

聞けばめちゃハメ氏、もともと美大の油絵科卒という。そりゃ上手いわけだ。ところが、大学卒業後はアート系の仕事に就くでもなく、なぜかフリーターとして働きながらエッセー漫画を描いているそうだ。

めちゃハメ氏が手掛けてきた作品。テイストも手法もバラエティに富む。そして、やはりエロが良い。

 

鈴「↑の動画みたいな制作活動って続けてるんですか?」

 

め「いんにゃ、最近はやってなくて。今はエッセー漫画中心ですね」

 

鈴「なんてったってそっち系の道に進まず、エッセー漫画を描いているんです?」

 

め「私は就職とか向いてなかったんですね。図書館でみんなが就活本とか開いている中、私はいいやって思って笑」

 

鈴「そっか、めちゃハメさんは社会に適合できなかったんですね!(喜)」

 

め「そうなんです笑 実は精神疾患持ちでして、同じルーティンとか続けるのが苦手なんです」

 

鈴「えっ、そうだったんですか。なんだか生粋の芸術家気質って感じですね」

 

めちゃハメ氏は、芸術活動を続ける傍ら、ノートの余白とかにエッセー漫画を描いていたという。そこからだんだん、自分は油絵よりも「日常にあった出来事をイラストと自分のメッセージとともに伝えるのが得意」ということに気が付いたそうだ。

 

忘れていた。我々は猫カフェに来ていたのだ。

 

創作の原動力はどこに?

 

 

鈴「めちゃハメさんの創作の原動力は何ですか?」

 

め「しいて言えば承認欲求ですよね。どうやったらこの孤独が伝わるだろうか、みたいな」

 

鈴「痛みに近い感じでしょうか?」

 

め「そうかもしれませんね。ただ、なるべくコミカルに描きたいんです。面白いほうがいいじゃないですか。あとは、ネガティブな気持ちから生まれた作品であっても、コミカルに描いて誰かが面白いと思ってもらえるなら、それも一つの“伝わった”ってことだと思うんです

 

鈴「面白いですね。じゃあ例えば、自分がすごい暗い感情で描いた作品に、『ウケるー』みたいな反応がきたら?」

 

め「全然うれしいです。それも、どっかの気持ちのエッジを切り取れたんだな、ってことですから。何も伝わらないよりは、知ってもらったほうが嬉しいですね

 

作品を描く作業も見せてくれた。(いつの間にか作品を入れたフォルダが猫の座布団になっていた)

 

鈴「エッセー漫画を描くときの信条的なものとかありますか?」

 

め「あ、これはなんか過去に書いたメモがあるぞ(ごそごそ)。あ、ありました。『エッセー漫画は自分の嘘を自分で見抜く過程が面白い』って書いてますね」

 

鈴「名言だ!」

 

め「あとあれですね、『実際世の中何も起こらないことのほうが圧倒的に多い。何も起こらないところからオチを見つけていくのがエッセー漫画』」

 

鈴「それも素敵な視点ですね。創作する人たちってみんなそうだと思うんですけど、日常ってそんなに面白くないんですよね。日常が平凡だから、創作で面白いことを作るというか」

 

め「うんうん笑」

 

あんなエロネタ交じりの脳みそお花畑的なエッセー漫画の中に、こんな哲学が含まれていたとは。めちゃハメ氏の底知れなさたるや。ここから、話はめちゃハメ氏の今後の展望の話にシフトしていく。

 

 

夢は「死ぬこと」

 

いつの間にか鈴木のPCケースも座布団にされていた

 

鈴「めちゃハメさんは、自分のエッセー漫画を形に残したいたいとか、今後の展望といいますか、人生の着地点ってありますか」

 

め「実はあんまりないんですよね。もちろん私のエッセーがなんかのタイミングで出版とかされたらいいなとかは思いますけど」

 

鈴「それは強い願望というか、夢を追いかける的な話とはちょっと違う感じですか?」

 

め「そうですね。というのも、私、希死念慮が強いんです」

 

鈴「きしねんりょ?」

 

め「とにかく死にたい願望ですね。私、死ぬことが夢なんです

 

鈴「なにそれ!とってもゆにーく!!!!!!」

 

め「えぇ。常にそんな気持ちがあるから、ちゃんとした仕事に就きたいとか、結婚願望とかもあまりないんです。だから、エッセーも頑張って漫画家になるぞー!的な強いエネルギーではなく、唯一生きるよりどころとして挙げるなら漫画家になりたい、くらいのイメージです

死にたい願望も、どこかコミカル

 

鈴「面白れぇ!!死ぬのが夢ってことは、もう夢の実現が約束されてる訳じゃないですか。やりましたねめちゃハメさん!!!!」

 

め「あ、よかったそんなポジティブな反応で笑」

 

鈴「あ、いやでもまてよ」

 

め「はい」

 

鈴「死ぬのが夢なら、なぜ今死のうと思わないんですか?(素朴)

 

め「別の人にも同じこと聞かれました笑。私としては、平凡な毎日を生きるだけでこんなに大変なんだから、死ぬなんてもっと大変なんですよ

 

鈴「なるほど!めちゃハメさんの死にたい願望って、例えば普通の人が『〇〇になりたい』って夢を叶えるのが大変なのと同じくらい、大変なことなんですね」

 

め「まさにそれです」

 

鈴「いや、でもやっぱいいなぁ。いつか必ずかなう夢。ちょっと羨ましい!」

 

め「そんなポジティブなとらえ方をする人もいませんでした笑。でも、普通の人ならネガティブに捉えがちな希死念慮をそんな感じで面白いって思ってくれる人がいるのも、私にとっては幸せなんです

 

 

・・・めちゃハメ氏の生き様、脳内、まさにふ凡。素晴らしすぎる。

 

本当はしっかりした絵も描けるのに、あえてヘタウマな絵を描き、内向的なのに性にまつわるネタを発信し、夢は死ぬこと。

 

室町時代あたり、もともと超ハイスペックな僧侶だったのに還俗して山に籠って女と遊びまくり、片手間にすごい水墨画とか描いて後世に残し、N〇Kの”最近再評価されてる偉人特集”的な番組で紹介されそうな人物設定ではないか。

後世の歴史特番で紹介されるの予定の絵

 

 

取材依頼を出しといてなんだが、まさかここまで真面目に哲学的&神秘的な世界が展開されるとはつゆ期待してなかった

 

その後も我々は猫喫茶に居座り、めちゃハメ氏がタブレットでエッセーの下書きを描く様を観察したり、オヤツをせびりに営業にやってくる猫に対応したり、めちゃハメ氏が1本2万の鍼灸を受けて今までの鬱が一時的に吹っ飛んだ話を聞いてゲラゲラ笑ったり、どろりとした素敵な時間を過ごした。

 

いつか必ず夢が叶うという約束されたレールに乗っためちゃハメ氏。彼女がこれからどんな人生を歩み、どんなエッセー漫画を生み出していくのか。気になるので、もうしばらくは生きていていただきたいと切に願う。

 

↑後日描いてくれた取材当日の様子。本当にこんな感じだった。

 

ふ凡社編集部 鈴木

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