大阪・関西万博の最終日に初めて万博に行った男の末路

こんにちは、ふ凡社です。

大阪・関西万博が10月13日に閉幕した。

私は13日に万博を訪れた。最終日にして、初めての万博だった。今回の大阪・関西万博どころか、「万国博覧会」というイベントに行くこと自体が人生初である。

この記事では、万博初心者が見た、大阪・関西万博最終日の様子をレポートする。「これからタイムスリップして、大阪・関西万博に行ってみようかな」と思っている未来人の方々の参考になれば幸いである。

行く直前まで、ずっと謎のままだった万博

画像は大阪・関西万博のプレスリリースより

最終日のレポートに入る前に、今回万博を訪れた経緯をお伝えしたい。

最初に白状すると、当初私は大阪・関西万博にあまり興味がなく、行く予定もなかった。なぜなら開催直前まで「いったい何が展示されるか」という情報を特にキャッチすることもなく、開幕後もニュースなどで目にするのは「パビリオンの予約が全然取れない」「虫が大量に沸いてる」「トイレの導線が終わってる」「なんか謎のガスが噴出している」といった、どちらかというとファニーじゃない話題のほうが多かったからだ。

そんな私をよそに、友人たちはこぞって万博に行く予定を立て、万博に関する情報を共有し合うLINEグループを作っていそいそと準備を進め始めた。私は「万博とはどんなもんじゃい」ということは人並みに気になっていたので、グループに入れるだけ入れてもらってやり取りの様子を眺めていた。

そのうち、万博に行った者たちからの報告が続々と挙がりはじめる。ところが、「スムーズに入場できたかどうか」「混雑具合はどうだったか」「どのパビリオンに入れたか」といった概要情報がメインで「万博に何があるのか」という具体的な話は不思議なほど流れてこなかった。それでも、言った人たちは口々に「万博良かったよ」「また行きたいな」と言う。

「みんなが万博に行き終わったら、グループのやり取りも落ち着くだろうな」と思っていたが、その後も万博に関する情報の共有は止まらなかった。そして、グループ内の友人たちから続々と「今度また万博に行きます」というメッセージが来る。二度ならず、三四度と行くものまで出てくる。

しかし、それだけ活発にグループが稼働していてなお「万博に何があるのか」についての解像度はいっこう上がらなかった。「うんところしょ、どっこいしょ、それでも仔細は分かりません」という具合だ。

私から見れば、関西・大阪万博は

「誰も詳細を語らないが、行った者はみな口々に良い良いと言い合い、何度も吸い寄せられていく謎の催し」

というややホラー味のあるイベントと化していた。

こうなると、さすがに気になって仕方がない。かくして、ついに万博に行くことを決めたのだ。

(ちなみに、件のグループでは万博開催の最終週まで「ラスト万博行きます!」という報告が相次いでいたが、結局詳細は分からずじまいだった)

予習もしないで大丈夫か?大丈夫だ、問題ない。

万博に行くことを決めたのは9月のはじめ。そのころには既に「閉幕に向けて来場者数の増加っぷりがヤバい」「ここから先はもう基本パビリオンとかには入れないものと思ったほうが良い」という話が出ていたから、「じゃあもういっそ一番ヤバそうな最終日に行ったろやないかい」というテンションで最終日のチケットを取った。

こたびの関西・大阪万博が「予習無しで行くのは無謀なタイプのイベント」であることは友人たちのグループを見ていて重々分かっていたが、私はあまり予習をしないことにした。

ネットでできるパビリオンの7日前抽選だけはやったが、見事に全部はずれた。いよいよ裸一貫、万博突撃である。

予想はしてたが全部はずれた

意外とすんなり入れた

東ゲートから12時~で入場のチケットを購入した。入場の時点でめちゃくちゃ混雑している可能性もありうるので、11時くらいには夢洲駅に着いた。

駅を出るなり、景色の向こうに大屋根リングの一部が見えた。「おおおあれが噂の!」とテンションが上がる。

遠くに見える大屋根リング

東ゲート自体は駅を出てすぐのところにあった。「ちょっと早く来過ぎちゃったかな」と思ったら、「本日12時から東ゲート入場のチケットをお持ちの人は、西口ゲートからも入場いただけます」とスタッフが呼びかけている。

西口ゲートが東口からどれくらい離れているか分からないので、「これは罠かもしれない」と一瞬迷ったが、まぁ早く着きすぎたので時間つぶしがてら西口のほうに行くことにした。

20分くらい歩いて、西口ゲートに到着した。なにせ大屋根リングの大きさすら分からないので、「北口から10kmくらい歩かされるんじゃないか」と身構えていたが、意外と早かった。

さぁ西口に着いたところで、入るまで一体どれくらいかかるんじゃいと思ったが、なんのことはない、列に並び始めて10分くらいで入場することができた。まさかの12時オンタイム入場である。

入場してからも人でごった返しているかと思いきや、人の数も割とゆったりしていた。あまりにもあっさりとかの万博に入れたので、「これは罠かもしれない」と思った。

ミャクミャクとツーショット。ちなみに、服装は「70年万博の時の男性来場者」に寄せた。

 

大屋根リングから全体像を把握しようと試みる

会場に入ったところで、右も左も分からない。あまりにも万博に対する解像度が低いので、いったん大屋根リングの上に登って会場全体を眺めてみることにした。

ごった返す人波をかいくぐって大屋根リングの上部にたどり着くと、穏やかな空間が広がっていた。大屋根リングの上はそこまで人が多くなく、みんなのんびり歩いたり景色を眺めている。

大屋根リングの上はゆったり

最初は「これが噂に聞いていた大屋根リングからの景色か~広いな~」と感動しながら歩いていたが、15分くらい歩いて気がついた。

「上から眺めても、何も分かんねぇや」

と。やはり、会場の中に飛び込んでみないことには「万博」は始まらないのだ。大屋根リングを半周したところで、下界に降りた。

複雑怪奇な万博の建物群

人類には早すぎた万博トイレ

大屋根リングから降り、本格的に会場を回る前にお手洗いに行っておこうかしら、とトイレを探すと、ちょうどXなどで「システムが芳しくない」と話題になっていたトイレが目に入った。確かに各トイレの前に行列ができている。

銀色の箱みたいなトイレ

おそらく、他に空いてるトイレも探せばあると思うが、やはりこれは一度経験しておきたいということで、列に並ぶことにした。

このトイレの特殊さは、個室の入り口と出口で扉が分かれていることだ。個室に人が入ると、入り口側に備え付けられた使用中ランプが点灯する。そして中の人が外に出ると、ランプがオフになる。外で待っている人は、ランプの点消灯を見て入れ替わりのタイミングを確認するのだ。

待つ人はピクトグラムに点灯するランプとにらめっこすることになる

扉の出入りをする必要がなく、導線が一直線になってスムーズに流れる画期的なトイレだということだと思うが、実際のところはかなりの混乱が起きていた。

まず私の前にベビーカー連の男性が入ったのだが、しばらくしてランプが消えたので扉を開けたところ、まだベビーカーごとその人が中にいた。

とっさに謝って扉を閉めようとすると、男性から「すみません、その扉押さえててもらっていいですか」と頼まれた。よく見ると、ベビーカーが中にあると、出口の扉を完全には開けない構造になっていて、つっかえていたのだ。

私が個室を使う番になると、近くの部屋からあーっ!ダメーっ!あけないで!という叫び声が聞こえる。続けざまにまた別の個室の外で「このトイレはロシア式だな!叩けば動くようになる!」という笑い声も。

どうやらボタンを押すタイミングによってまだ中に人がいるのに外の人が勘違いして入ってきちゃったり、ランプの挙動がおかしかったりで、いろんなバグが生じているようだ。

技術的には画期的だが、まだ人類には少し早い設計な気がした。しかしこれもまた、新しいものが集まる万博ならでは、という感じがして良い。

トイレだけですでに楽しい。

万博初めて見ることができた展示は…

トイレから出て、いよいよパビリオンが立ち並ぶ会場の中心部へと入っていく。ところが、マジで何が何やら分からない。予習をしてきていないので当然である。がはは。

ざっと見渡した感じ、やはり多くのパビリオンが「予約できた人だけ」の開放になっていたり、列が長すぎて並ぶのを打ち切りにしたりしていた。「さすが万博最終日。こりゃ本当に、予約なしだとなんの展示も見れないかもしれないぞ」という不安がもたげる。

どこか入れるところはないかと探していると、「予約不要」の看板が目に入った。屋外の展示だった。「おぉ、入れるところあるじゃーん!」と、いそいそと足を踏み入れた。

どんな展示かは一切わからないが、これが人生で初めて万博で触れるコンテンツ。「一体何が展示されているのかな?」とワクワクしてのぞいてみたものがこちら。

なんだこれは

四つの大きなガラス瓶が並んでいる。一番左にはきれいな花が詰まっている。

綺麗なお花

その横にしおれてカビが生えた花→枯れた花→朽ちて土になりかけている花が続く。花が自然に返っていく様子を、段階を踏んで見せてくれているようだ。

朽ちたお花

……分からないよ!!!何も!!!!

「万博で最初に見たものは、朽ちる花」という味わい深い実績を解除した。

ついに「国のパビリオン」に入る

その後も入れる場所を探すのは大変で、フードコートみたいなところが賑わっていたり、遊具が設置してあるコーナーで子どもたちが遊んでいる様子を眺めながら、なんだか自分が南町田クランベリーパーク(東京都町田市にある巨大なショッピングモール)に来ているような気がしてきた。

「万博会場の中に広がる光景は、休日のショッピングモールに近い」

これも、かなり意外な発見だった。

会場のマップすら持たずにさ迷っていると、ついに予約なしで入れるパビリオンを見つけた。「カンボジア館」だ。

万博というとでっかいパビリオンが立ち並んでいるイメージが強いが、各国による大小さまざまな規模のパビリオンがある。カンボジアは、小規模なパビリオンのうちの一つだった。

最終日ということで、チケットの予約をした時点で「もう各国のパビリオンには入れない心づもりで行こう」と思っていたから、普通に入れるパビリオンがあって驚いたし、テンションが上がった。

カンボジアパビリオンはアンコールワットのドローン映像を映し出すでっかい液晶があったり、文化財が展示してあったりと、小規模ながら「国のパビリオン」として美しく仕上がっていた。ようやく「万国博覧会に来たのだ」という実感がわいて嬉しかった。

カンボジア館のでっかい液晶

カンボジアパビリオン以後、私の万博行脚は加速する。「どこに入れるかも分からない、どこも入れなさそうに見える」状態だった会場内も、よく見たら「普通に入れる」施設がまだまだたくさんあることを知ったからだ。

次に入ったのはサウジアラビアのパビリオンだ。

サウジアラビアは正真正銘の巨大なパビリオンだったので、「えっ、予約なしで入れるの?本当に?」と思った。中に入ってみると、巨大な柱がそびえたつ神殿みたいな空間が広がっていて、たまげた。

圧倒的なインパクト

柱の間に、サウジアラビアにまつわる文化的な展示が点在してあり、サウジアラビアの伝統的な衣装を着たスタッフたちがフレンドリーに来場者に解説をしている。

UAE宇宙庁、宇宙統括ディレクターのモフセン・アル・アワディ氏のフィギュア

それでもやはり、会場を埋め尽くす巨大な柱が圧倒的な存在感を放っていて、「うひゃあすげぇ!」という感想しか出てこない。

巨大なパビリオンを建造しながらも、内側の大部分を「巨大な柱」で埋め尽くし、空間全体をゆったりと使って誰でも自由に出入りできる形で開放する。混雑してなかなか施設内に入るハードルが高い万博会場内にあって、「誰でも入れるでっかいパビリオン」の存在はそれだけで嬉しいし、サウジアラビアという国が好きになっちゃう。

他にもでっけぇ丸いモニターにでっかくラクダが映し出されていたりする

まさに「経済大国の圧倒的な心の余裕」を感じるパビリオンだった。

夕方になってギアが入ったが…

夕方になって日が傾き始め、涼しくなってきたことで明らかに会場全体の「活気」のギアが一段階上がった。よっしゃ、ここいらで一つでかいパビリオンの列に並んでみようと思った。「フランス館」である。

その頃にはフランス館の待ち時間は「1時間」になっていた。大国のパビリオンは軒並み大人気と聞いていたから、むしろ1時間で予約なしで入れることが驚きである。

フランス館の中は、そりゃあもう凄かった。「万国博覧会」と聞いて思い浮かぶ通りの、徹底的に趣向を凝らした見事なパビリオンだった。

エレガントの極みみたいな展示ばかり

フランス館に感動して、「よし、この調子で大国のパビリオンにどんどん並ぼう!」と意気揚々外に出たが、その望みが叶うことはなかった。

というのも、デカいパビリオンが、どんどん店じまいを始めていたのだ。万博の営業時間?は22時までと聞いていたので、パビリオンもある程度遅くまで開放しているものだと予想していたが、大規模なパビリオンは18時になる頃には軒並み受付を終了していた。ここで、予習無しの弊害がモロに出る。

ちょっと寂しい営業終了の看板

18時30分くらいになると、フィナーレを飾る花火大会が始まった。花火は美しいが…なんか会場全体が「いや~万博も終わりですなぁ」ムードに包まれ始めた。実際、これくらいのタイミングでぞろぞろとゲートに向かう人が増えた。

あれっ、終わる?万博終わる?

夜の万博会場内は最高

あれ、じゃあ22時の閉幕まで、あとは何をするんだ?

と思ったが、この「夜の万博会場」というのが、これまた最高に素晴らしかったのである。

まず、デカいパビリオンが色とりどりのイルミネーションで照らし出されて、中に入れなくとも見ているだけで美しい。

美しいライトアップが夜に映える

そして、入場者たちが「パビリオンを狙って動かなきゃ!!!」というプレッシャーから解放されたこともあってか、会場全体の空気も和やかになり、それでいて人々の活気もあってとてもいい雰囲気になっている。

来場者とコール&レスポンスをやるオーストリア館のスタッフたち

営業を終了したパビリオンでは、各国のスタッフたちが表に出て来て即興のパフォーマンスをしたり、来場者たちに向かって「ありがと~!」「楽しかった~?」と手を振ったりしている。スタッフと来場者が混ざり合って一緒に盛り上がっている様子は、見ていて楽しかった。

ブラジル館の前ではなぜかシロクマとティラノサウルスが狂ったように踊っていた

夜になっても、中小規模のパビリオンの中にはまだ来場を受け付けているところが残っており、日が暮れて以降は「会場の空気を楽しみながら、空いてるパビリオンを見つけてはちょくちょく入場する」時間になった。「大将、まだやってる?」と居酒屋を探すテンションである。

お土産屋さんと各国のブースが合体したようなパビリオンもあった。楽しい

空いているパビリオンの中も、「いやいや万博もいよいよ終わりですなぁムード」になっていて、これまた良かった。

閉幕で気づいた悲しい事実

賑やかな夜の万博会場を楽しみながら巡っているうちに21時30分を過ぎ、会場内での全てのイベントが終了して、入場者に閉幕が近づいていることを告げるアナウンスが流れた。

最後のドローンショーでミャクミャクが「バイバイ」って言って消えた時はちょっと泣きそうになった

出口のゲートに向かって歩いている間も、周りの景色を眺めながら浮かぶのは「あの建物はなんだったんだろう」「あの建物も気になったな」「あぁ、あれもだ」といった言葉ばかり。

そして22時になり、会場に万博の閉幕を告げるアナウンスが鳴り響く。この瞬間

「そうか、もうあの気になった建物たちの中を、自分の目で確かめることはできないのだ」

と気づき、激しい後悔が押し寄せて来た。

会場全体を包む「お疲れ様、ありがとう」という温かい労いのムードの中で、「ああああああああああああこの輪にちゃんと入りたかったああああああああああああああああ」と思った。

名残惜しそうに出口に向かう来場者たち

駅に向かう道中も、まわりの来場者から口々に「えぇ~終わるの寂しい~」という声が聞こえてくる。たった1回来ただけでも痛いほど気持ちが分かるので、複数回訪れていた人にとっては尚更だろう。

万博に何があったの?と聞かれても

これまでの「万国博覧会」という催しに対するイメージは「各国が威信をかけて作ったハイレベルなパビリオンを見て回ることができる、カッチカチでパリっとした一大イベント」という感じだった。

ところが実際に行ってみると、前半しか合っていなかった。スタッフの人たちも「よってらっしゃいみてらっしゃい」というお祭りテンションで、来場者、スタッフともに和気あいあいとコミュニケーションを取りあいながら会場全体がなんだかワクワクしている感じがあった。

この「会場にいるだけでなんとなく緩やかで楽しい感じ」に覚えがあるなと思って記憶をたどったところ、「あっ、文化祭だ」と思い至った。ありとあらゆるものがあって、内も外もいろんなところで賑やかな出来事が起きていて、いい意味でごちゃごちゃしていて、なんかトータルで楽しい。まさに学校の文化祭的な楽しさがあったのだ。

なので、今私が誰かから「万博に何があったの?」と聞かれても、明確な回答が浮かんでこない。個別具体的な例を挙げても、万博に行っていない人からすると「なんかよくわからないな」と思われるだろう。そして「で、それは楽しかったの?」と聞かれたら「楽しかったよ、また行きたい。というかまた行く」と答えるだろう。

……これか!!!!!

万博グループのやり取りを眺めていても、いっこう全容がつかめなかったわけだ。なるほどこれは、行った者にしか分からない楽しさ。完璧な伏線回収である。

万博初心者による、最終日のレポートをまとめる。これから関西・大阪万博を訪れようと思っている未来人の皆さまにお伝えしたいポイントは、以下の通りだ。

1、万博は予習してから行った方がいい

2、万博は開幕期間中、複数回行ったほうがいい

3、最終日はめちゃくちゃ楽しい。多分1、2をやってから行くともっと楽しい

私は結果的に、関西・大阪万博でこれをやらなかったことを多分一生後悔すると思う。それでも最終日に1回でも行っといて本当に良かった。

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