紙粘土で「玉ねぎが抜けちゃったオニオンリング」を作る

ぐるりと一周空洞の衣を作るには

オニオフリングの真ん中が抜けちゃった感を再現する方法を考えるにあたり、最初は

 

紙粘土を長く薄く延ばして、玉ねぎ型の空洞ができるようにして輪っかの形につなぎ併せれば良いのでは

 

と思った。しかし、紙粘土は柔らかいので、何の支えもなしに輪切りの玉ねぎのように薄くて細長い空間だけを残した状態で成形・乾燥するのは至難だろう。

空洞を再現するにあたっては「玉ねぎ型の型」の存在は不可欠だと判断した。

そこで

紙粘土で玉ねぎの型を作り、衣だけ引きはがす

という方法を試すことにした。型から衣部分だけを上手く引きはがす方法はまだ思い浮かばないが、とにかくやってみよう。

さっそく輪切りの玉ねぎみたいな薄い輪っかの型を作り、一晩乾燥させる。

実物の玉ねぎの輪切りを見ながら型を作る

型を作ったあとは、以下の工程でやってみることにした。

1、型全体をぐるりと一周覆うように、オニオフリングの「衣」にあたる紙粘土を巻きつける

2、玉ねぎの型に沿って衣の内側と外側にカッターで一直線の切れ込みを入れ、衣パーツを上下に分割する

3、上下のパーツをくっつけて、切れ目を塞ぐ

この工程を思いついた時は、「こりゃもう絶対に上手く行くなイヒヒヒヒ」と自信満々だったのだが、私の目論見は失敗した。

衣部分に切れ目を入れて上下に分割しようとした段階で、玉ねぎの型に衣の粘土がベッタリとこびりついてしまっており、衣部分が崩壊してしまったのだ。

そう、型のほうをしっかり乾燥させていたとはいえ、素材は同じ紙粘土。しっとり湿った乾燥前の紙粘土と、乾いた後紙粘土の表面とが、がっつりと癒着?してしまったわけだ。

ここで肩を落としている暇はない。さっそく玉ねぎの型を作り直し、今度は乾燥後に水性ニスを塗って表面をコーティングし、さらにその上からサラダ油を塗ってスベリをよくした。

食用油でテロッテロにしてくれる

さらに、2回目は衣部分をしっかり乾燥させてから切り離す作戦に変更。

果たしてこの方法が上手くいくかどうかも確証はないので、念のため玉ねぎの型を2本作り、まずは1本目でこの新方式を試してみることにした。いわばプロトタイプだ。

転ばぬ先の玉ねぎ型×2

乾燥したプロトタイプの衣部分に、今一度カッターで切れ目を入れていく。思いのほかカッターの抵抗が少なく、するすると刃が通ることに驚いた。なるほど紙粘土は「紙」なので、乾燥後はカッターとの相性も良いみたいだ。

内側、外側と切れ目を入れて、いよいよ分割作業に入る。

切れ目の間にカッターの刃を入れて、指が引っかかるくらいの隙間を作る。この段階で、「ぺりっ」と小気味よい音がして、衣部分がするりと剥がれる感触が。手ごたえあり。

そっと指を入れ、内側、外側と交互に少しずつ衣を剥がしていく。そして…

ちゃんと抜けた~!!!!!

見事、衣部分を分割することができた。分割したパーツどうしをその場で合わせてみると、ちゃんと玉ねぎの形に空洞になっている!!これこれ、この状態を再現したかったのだ!!!素晴らしい!!!!

ちゃわと「玉ねぎが抜けた感」が出ている

このやり方であれば、最初にして最大の難所をクリアできると確信し、私はそのままもう一つ用意していた「玉ねぎの型」を使って、本番用の原型づくりに突入した。

プロトタイプと同じやり方で衣部分を作り、一日半乾燥させる。

絵具は「世界堂」で買ったほうがいいワケ

衣部分の乾燥と同時進行で、新宿の画材屋「世界堂」に衣の色用のアクリル絵具を買いに行った。

何でもそろう画材のジャングル、世界堂(ジャングルだぁ~)

私は毎年この時期になると世界堂を訪れる。なぜなら、日本最大級の画材屋ということもあって、絵の具の品ぞろえが半端でないからだ。

基本的な色の絵具なら近所の100均などでも買えるが、その場合は混色して色を作る必要が出てくる。この混色が曲者で、美術的な知見も混色の知識もない私にとっては、迷路に迷い込む鬼門になりうる。

なので、世界堂に行って、大量の色の選択肢の中から「オニオンリングの衣っぽい色」を選ぶ方が手っ取り早いのだ。

売り場でよさげな色を見つけてもまだ安心はできない。店頭の色見本で見るのと、実際に塗って乾かしてみるのとでは印象が異なる仕上がりになる可能もあるので、候補となる色をいくつかみつくろって買っといたほうが良い。ここでお金を惜しんではいけない。

複数の色を買うにあたっては、同系統の色で「濃・淡」を意識して揃えると、重ね塗りをしたとき色合いにリアル感、深みを出しやすくなる。これはこれまでの地味工作の経験則で学んだことだ。

今回はこげ茶っぽい色と、オレンジがかった茶色の2本を買った。

写真左:「トランスペアレントイエローアイアンオキサイト(オニオンリングの衣色)」右:「ローシェナー(オニオンリングの衣色)」

色の名前は「ローシェナー」と「トランスペアレントイエローアイアンオキサイト」というらしい。トランスペアレントイエローアイアンオキサイト?贅沢な名だね。あんたの名前は今日から「オニオンリングの衣色」だよ。

突如訪れた、最大のヒヤリハット

世界堂から帰還すると、ちょうど本番用の型が乾燥していた。プロトタイプと同じ要領で最新の注意を払って切れ込みを入れ、無事、完璧に上下を分離することができた。テッテレー!!!!やりました!!!!

プロトタイプよりもさらに美しい断面

さて、無事分割できたところで、上下のパーツをくっつける作業に入る訳だが…その前にやるべきことがある。衣の内側の塗装だ。

せっかく1周くり抜くことができたんだから、内側だってしっかり衣の色に塗りたい。そのためには、今の段階で最初に内側だけ色を塗ってしまってから上下パーツをくっつけたほうがいい。

ということで、さっそく買ってきた2色の絵具を使って、まずはプロトタイプで作った衣を実験台に試し塗りをしつつ、良い感じの「衣の色」を整えようと考えた。しかし、ここで予想外の戦慄が走る。

分割したあと部屋に放置していたプロトタイプの衣を見ると…

ひしゃげて浮き上がっちゃってる

めっちゃ捻じれてる!!!!

玉ねぎの型を抜いた状態の衣部分は表面が薄く、ひょろ長い。これをただ放置して乾燥に突入した結果、乾燥の間に縮んでぐにゃりと変形してしまったのだ。こうなってしまうと、ねじれを直してくっつけるのは至難だろう。

ということはつまり…

本番用の衣、さっさと接着しないとヤバい!!!!

本番用の衣も既に上下分割してしまっているので、衣色を悠長に模索している場合ではない。

プロトタイプに「ローシェナー」と「トランスペアレントイエローアイアンオキサイト」を塗り比べてみて、より濃い色の「ローシェナー」のほうが内側の色としては良いと判断。すぐに本番の型の内側にローシェナーを塗り、色の乾燥をあや待たず、そのまま上下パーツをくっつける作業に入る。

焦りと緊張交じりの内部塗装

衣の断面にジェル状の瞬間接着剤を塗り、上下のパーツを慎重に嚙み合わせる。そして、くっつけた衣の上に段ボールを敷き、さらに何冊か本を置いて重しにする。こうすることで、パーツどうしをしっかり圧着させつつ、乾燥による変形も防ぐことができる…ハズだ。

変形しないで乾燥してくれ~!!(※重し役の『ホーンテッドマンションのすべて』(講談社)はマジで名著なのでみんな読んで)

丸1日乾燥させたところで、衣の状態を確認してみる。重しと段ボールを取り除き、緊張の瞬間。

ネジレテナーイ!!!

変形することなく、しっかりくっついてる!!!ヨカッター!!!!

ちなみに、この時点で地味ハロウィン本番まで2日を切っていた。ぶっつけ本番で衣を作っていたら、きっと乾燥によるねじれの発生に気付けず、当日までに完成させることはできなかっただろう。プロトタイプを作っておかなかったらどうなっていたかと想像しただけでも、冷や汗が出る。

何事も余裕を持った準備が肝要である。

次ページ:玉ねぎの色がわからない!そんな時は

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です