【第3回口頭弁論を前に、ついに求めていた資料が届いたか!?】
ここまでの裁判の準備期間中、私はずっと不安に襲われていた。
「どう見ても先方の請求内容や主張はガバガバに見えるけど、管理会社として長年やってるならこの手のトラブルは慣れっこだろうし、当然賃貸まわりの法知識も素人の消費者とはダンチだろう。
プロがそんな基本的なポイントを抑えずに不当な高額を請求してくるわけもなかろうし、確たる勝算があるから反訴もしてきたんだろうし。一見ガバガバな証拠しか出さないのも、何か裏があるのではないか」
と思っていたのだ。ところが、2回の口頭弁論を経て裁判官の見解を聞き、名実ともに「先方の請求内容がやはりガバガバである」ことが分かった形になる。
恐らく、先方からよほど天地をひっくり返す新たな証拠とかが出てこない限りは、第3回の口頭弁論で決着がつくだろう。
さて、第3回口頭弁論に向けて先方からの新たな資料を今か今かと待っていたが、待てど暮らせど届かない。ようやく届いたのは期日10日前。先方が「出せる」と明言していた詳細な証拠と、ついにご対面なるか。
封筒を開けると中に入っていたのは、
・準備書面
・部屋の広さを示す資料1枚
・ほぼ解像度の変わらない微妙に角度が違うトラブル箇所の写真
だった。もうずっこけ100人組である。
準備書面のポイントは以下の通り。
・ルームクリーニング費用は払いますと合意して捺印してるし。それに掃除したつってるけど、部屋の一部にカビが生えてるなど極めて汚損状態が酷い状態で引き渡してるから全額払うべし
・クローゼット内部に除湿剤とか置いてたってことは、明らかに内部剥離に事前に気付いていたという証拠である。だから払うべし
・リモコン、ハシゴは本来無くなるわけないし、紛失時の状況の詳しい説明とかもされてないから怪しい。全額払うべし
退去時にクリーニング費用払います、と捺印しているのは正しい。しかし部屋全体にしてみればごく一部の汚れの残存をもって、なんか「部屋全体をホーンテッドマンションみたいにして明け渡した」みたいな書き方がなされているのが不服である。
クローゼットの内部剥離については、なんか、もう…いいや。
ハシゴについては管理会社に最初に退去を伝える電話をした際に「状態が悪くなってたから破棄した。リモコンと一緒に新品に交換する必要あります」と伝えたところ
「じゃあリモコンと一緒にハシゴも紛失の扱いで処理しときますわ」
と言われていた。だからリモコンもハシゴも請求書上は紛失扱いになっていたのだ。
そのことが社内に伝わってなかったのかどうかは知らないが、準備書面を見る限り「ほんとうは紛失してないんじゃないか!」と言いたげな気焔を吐いている。
ほかにもペライチの陳述書が入っていて
「私見だけど、建物内の設備に減価償却の考えを認めると、悪意を持った人が新品の状態で備品を売りさばき、数年後に減価償却してるとして売却益を得るという新たな被害を生む可能性があるから、そんな事例を生み出さないためにも、減価償却を考慮せんといて」
という主旨のことが書かれていた。
ヤダ私、ひょっとして、ハシゴとリモコンをメルカリで売ったと思われてる!?!?!?!?
恐らく先方にも半年以上前の電話の音声データなんて残ってないだろうし、言った言わないの争いになるのが目に見えているので、ここもまぁ、裁判官の判断にゆだねることにした。私が照明リモコンとハシゴを売りさばいてウハウハだったかどうかの検証はいったん置いておこう。ところで。
だから、施工業者の実態を示す資料と、施工の詳細を示す証拠は??????
そう、一番大事な資料が、やはり、入っていないのである!裁判する前から求め続け、裁判官からも求められ、引き延ばしに引き延ばした結果ようやく届いた資料の中にも、まだ入っていないとは。
次に行かなきゃならない目的地が分かっているのに、なぜかいろんな障害に阻まれていつまでも目的地にたどり着けずに焦る悪夢を見ることがある。感覚的にはそんな感じ。私は夢を見ているのか????
「さすがにこれはもう、相手は『これ以上証拠を出せません』と言っている、と解釈してよいラインでは」
と父に確認したところ
「そのように思う」
と回答があった。
第3回の期日ももうギリギリまで迫っていたが、一応
・ハシゴを紛失扱いにしたのはそっちでっせ
・もう何回目かになるかわかんないけど、客観的な証拠を全然出してこないから先方の請求は認められない
と書いた書面を先方と裁判所にファクスで送って、第3回口頭弁論を迎えた。
【まさかの期日当日に新たな資料が】
第3回口頭弁論当日、法廷に入るとまだ裁判官は到着しておらず、書記官から
「先方から今日提出された新たな資料があるから、まずそれを確認してください」
と言われた。バカな。
「なるほど、こちらの準備が間に合わない当日まで、最終証拠の提出を引き延ばしていたのか!奴さん、やってくれるじゃねぇか!!!」
と思ったが、裁判当日に資料を提出するのは特にルール違反ではない。その上で裁判所の判断に不服があれば控訴できるので、問題ない。問題はないのだが、にしてもよ。
書類を確認すると、(やはり画質の荒い)トラブル箇所の施工後の写真と、なぜか避難ハシゴのパンフレット、そして
・そっちが「施工前後の証拠を出せ」というから施工後の写真を出すぞ
・避難ハシゴを破棄したつってるけど、破棄する程悪くなったなんてどんな状態か、パンフレットあげるから納得のいく説明をせよ
という旨が書かれた陳述書が1枚。
「いや、施工後の写真をこのタイミングでようやく出してドヤ顔をされても…」という感じである。
ハシゴについては、やはりメルカリで売ったと思われているみたいだ。以上。
ここまできたらもはや言わずもがな、やはり「施工業者の実態を示す資料」と「どんな施工をしたか」の情報はない。
裁判が始まり、第2回と同様、提出書類の確認が済んだところで、裁判官が口を開く。
「今日の口頭弁論で和解等の決着がつかなかった場合は、2か月後の〇月〇日〇時に判決を下します。あと、もう双方これ以上追加の資料・証拠は出てこない、ということでいいね?」
とのこと。つまり、今日決着がつかなければ、裁判側で判決を下すわけだ。
私も先方の担当者も「はい」と同意し、提出資料の最終確認に入る。
新たに先方から提出された資料についても、裁判官は
「うん、やっぱりまだ証拠として弱いよねぇ…クローゼットの内部剥離もこの写真じゃまぁ、剥離というか隙間って感じに見えるかな」
とバッサリ。さらに
「備品に減価償却を認めてしまったら、うんぬんの陳述は…まぁ一つの意見としてはあるかもしれないけど、裁判では認めるのは難しいよね」
とバッサリ。うん、ですよね。
結局、最後の最後まで先方の証拠不十分なまま、流れるように「和解調停」に入ることになった。
次ページ:ついに決着・和解調停
面白い❗️文章上手。めちゃくちゃ為になった。
ちょうど引っ越す前なので、興味深く読ませていただきました。
読み応えのあるレポートで、思わず一気読みしました。勝訴に近い和解、ご苦労様でした。
数年前、娘の交通事故被害の損害賠償請求で、損保会社と交渉をしたときのことが記憶に蘇りました。保険会社はいかに賠償金額を下げるかに会社業績がかかっているのでなかなかタフな交渉でしたが、不動産管理会社も似たところがあるのでしょう。
この記事を書いてくださり本当にありがとうございます!!!
長年のモヤモヤがスッキリいたしました。
もう10年以上前の事ですが、
一人暮らしのアパートから結婚を機に引っ越すときに
同様に
避難ハシゴの件で大家さんに文句を言われました。
「押入れの中にあったはずのハシゴが
なぜベランダにあるのか?
野ざらしになってボロボロになった。弁償だ!
払わなければ敷金礼金も返さない」
と言われ、
10年も住んで今まで仲良く一階と二階で住んでたのに
そんな事でキレられてショックでした。
不動産会社の立ち会いの人も
「でも避難はしごを押し入れにしまっておくのもおかしな話だし、ベランダに置いておいても変ではない」
と言ってくれたし
私も
「綺麗なまま取っておいてとも言われていないし
そんなにボロボロでも無い。
隣の部屋のベランダをいま覗いてみても
ほら、はしご置いてありますよ?
説明不足じゃないですか?」
と言っても
全然聞く耳を持たず。
それこそ「訴えてくれても良い」みたいな強気。
長引きました。
結婚準備もあり、そんな事でイライラするのも悲しかったので
「このままじゃ埒があかないので
お互いに折半でどうですか?
新品を買うと2万なので、1万ずつで!」
と
交渉を持ちかけたらokに。
1万円もらって、その上で
楽天で1万円くらいで新品見つけて
GETしました。笑
私の金銭負担はなく、気持ち的にも大勝利でした。
でも納得いかない想いと
あんなに仲良かった大家さんと最後にモメてしまったのがずっと心残りでした。
でも、この記事を読んで
「私やっぱり間違ってなかったじゃん!!
しかも
減価償却って考え方もあったのか!
それに
訴えてたらこんなに時間かかって
イライラもする事になってたのかー!
ほんとお疲れ様でございます…」
と
あの頃の気持ちがよみがえりました。
あの時に、この記事が検索できていたら。
いや、
今後引っ越す人の目にふれることを願って。
重ね重ね、貴重な記事をありがとうございました!!!
こんにちは。全て読ませていただきました。
貴重な情報をありがとうございます。
私もまさに昨日不動産屋さんから28万円余りの退去費用の請求をされ、国土交通省のガイドラインや、他ネットの情報を熟読している所です。
発生から裁判終了まで丁寧に説明いただき、概要が掴め、とても心強く思いました。
弁護士さんのお父様のご意見も、とても貴重でありがたく参考にさせていただいております。
また、軽快な語り口で、難しい内容もすんなり理解でき、むしろ楽しく読ませていただきました。ありがとうございました!
今日明日で自分の主張をまとめ、不動産屋にファックスしようと思っています。
頑張ってみよう、という勇気をいただきました。
ありがとうございました。